賃金が上がらない日本を待つ「最悪の状況」。原油高&円安でオイルショック以上の値上げに
価格転嫁と賃上げがない日本
かつてゴールドマン・サックスのファンドマネジャーとして2000億円もの資金運用に携わっていたアズムデ・アミン氏もこう口を揃える。
「オミクロン株をきっかけに、すでに多くの国が入国制限などの感染対策に乗り出している。そのため供給不足は改善されず、さらなるインフレを招く可能性は高い」
原油高やコロナ後の需要拡大で世界的なインフレ懸念が広がるなか、経済回復が堅調な米国と、出遅れ感のある日本とでは事情が大きく異なると分析する。
「先頭を走る米国では企業の営業利益率は過去最高の水準で、S&P500種の企業では、コロナ前の2019年と比べても平均2%改善していて、賃金も30年ぶりに上昇。企業はインフレによるコスト高を強気に価格へ転嫁し、消費者も特に抵抗なく受け入れている。コロナ対策のバラマキで貯蓄も改善し消費意欲(購買力)も強い。つまり、インフレ率が上がってもそれを十分吸収できているのです」
早期の賃上げが必要
一方、数字のうえではまだわずかな物価上昇にとどまっている日本はどうなのか。
「企業は、どのタイミングで設備投資を再開すべきか判断が難しく賃上げもやりにくい。GDPが回復していない時点で値上げを行えば、スタグフレーション色がより一層強まってしまう。今の日本で3~4%物価が上がれば一気に購買力は下がるなど、家計を直撃するのは間違いない。やはり、急激なインフレに耐えるには、早期に企業が賃上げせざるを得ない好循環をつくることが必要でしょう」
産業界に賃上げを要請する構えを見せている岸田政権。果たして、スタグフレーションを回避するため、早期の賃上げは実現できるのか? 政治が試されている。
<取材・文/池田 潮 写真/産経新聞社 朝日新聞社>
【藤巻健史】
経済評論家。フジマキ・ジャパン代表取締役。モルガン銀行元在日代表。日本維新の会元参議院議員
【森永康平】
経済アナリスト。執筆・講演・テレビやラジオ出演の傍ら子供向け金融教育ベンチャー、マネネCEOを兼務
【アズムデ・アミン】
元ゴールドマン・サックス証券MD。エンジニア。起業家。ゴールドマン・サックス証券東京支店にマネージング・ディレクターとして勤務。2014年に退社後、投資家支援のプラットフォームを運営するクリプタクトを起業。代表取締役を務める