消えゆく「ビン牛乳」。森永乳業に、ビンの宅配をやめないワケを聞いた
牛乳販売店を新規開拓する課題も
メーカーと共に、ビン牛乳の文化を支えるのが牛乳販売店の存在だ。しかし、その数は減少傾向にある。牛乳販売業者などによる業界団体・一般社団法人Jミルクが発表した「牛乳販売店数の推移」によれば、1972(昭和47)年に2万104店あった牛乳販売店は、2016(平成28)年で5964店にまで減少。少子高齢化がその背景にあるという。
「牛乳販売店として契約いただいている店主の方の中には、70~80代の方もいます。愛着をもって続けてくださる方がいる一方、届けたい気持ちはあるものの『体力的に厳しくなってきたのでもう続けられない』という声もあり、弊社としても寂しさを感じる部分です。現在、全国3000店の販売店がありますが、配達ができないエリアがあるのも事実です」
時代の変化に対応する手段はあるのか。専門の牛乳販売店が減少している一方で、読者数の減少に悩む新聞販売店が牛乳の宅配も手がけるケースも目立つという。
「弊社では、ここ5~6年ほどで新聞販売店さんからの問い合わせが増えました。ご契約いただいた新聞販売店さんが冷蔵庫を設置して、商品をご家庭中心に配達していただいています」
ビンの“情緒的価値”も届けたい
かつて、一軒家の軒先で乳製品メーカーのロゴが描かれた「宅配ボックス」をよく見かけた印象もある。近年定着した「置き配」を古くから導入していたのも、宅配牛乳の歴史を感じさせる。しかし、近年は、都心部を中心に広がるオートロックマンションの存在も配達する上での課題にあるようだ。
最後に、牛乳販売店の減少や住環境の変化などがあってもなお、ビン牛乳の宅配事業を続ける理由とは何か聞いてみた。
「ビン牛乳をはじめ、弊社の宅配専用商品を10年、20年と長期で契約し続けてくださっている方々の存在は大きいです。なかには、親子三代で契約されている方もいらっしゃいます。牛乳配達といえば早朝のイメージがあるかもしれませんが、地域によっては、お昼の時間帯に配達させていただいているケースもあります。
一方で、ビンには懐かしさや特別感、安心感や鮮度感といった情緒的価値もあるかと思います。昔ながらの容器ではありますが、こうしたプラスのイメージを人びとに抱いていただくことができる『特別な容器』でもあると思いますので、長らくご愛顧いただいているビン商品で『安心』や『健康』をお届けけできるよう努めていきたいです」
消えゆく「ビン牛乳」需要のなかで、森永乳業の次の一手に期待したい。
<取材・文/カネコシュウヘイ>