なぜチンパンジーは半身不随でも幸福なのか?イライラを収める驚きの仕組み
あなたの怒りは6秒しか持続しない
あなたが誰かから暴言を浴びせかけられたとしましょう。このとき、あなたの脳内では大脳辺縁系がアドレナリンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質を吐き出し、心と身体を戦闘状態に変えます。
怒りで身体が熱くなり、全身の筋肉が硬くなるのはこれら神経伝達物質の働きによるもので、そのまま何も対策しなければ、あなたは瞬時に相手へ暴言を吐いたり殴りかかったりといった反応を起こすでしょう。
しかし、ここで少しだけ待つと、人間の理性をつかさどる前頭葉が大脳辺縁系を抑えにかかり、少しずつ神経伝達物質の影響を無効化していきます。前頭葉が起動するまでの時間は平均で4〜6秒で、そこから10〜15分も経てばアドレナリンやノルアドレナリンの影響力はほとんど消えてあなたの怒りは鎮まります。
つまり、暴言を受けてから6秒だけやりすごせれば、怒りは過ぎ去るわけです。同じ戦略は、目の前の誘惑に耐えたいときも使うことができます。
誘惑は10分、我慢すれば忘れられる
プリマス大学の実験では、まず被験者に「いま最も食べたいものについて考えてください」と指示し、好きなお菓子やコーヒー、ニコチンなど、好きなものを自由に思い浮かべさせて欲望をかき立てました。
続いて、被験者の半分に「テトリス」を3分間だけプレイさせたところ、おもしろい変化が起きました。ゲームで遊んだグループは、そうでない被験者に比べて渇望のレベルが24%も下がり、カフェインやニコチンにさほどの魅力を感じなくなったのです。
このような現象が起きた理由は、先のアドレナリンと同じく神経伝達物質の影響力が下がったのが理由です。
通常、何か欲しいものを前にした人間の脳内にはドーパミンというホルモンが分泌され、あなたの欲望をかき立てる方向に働きます。ドーパミンは人間のモチベーションを駆動する物質であり、いったんその影響下に置かれたら逃れられる人はほぼいません。
ところが、欲望を抱いた直後に「テトリス」で脳の注意を一時的にそらしてやると、ほどなくドーパミンによる支配力は薄れ、前頭葉の自己コントロール能力が戻り始めます。ドーパミンの持続時間は平均10分前後で、その時間さえしのげばあなたは渇望に流されず、誘惑の苦しみから解消されるわけです。