僕らは「大坂なおみ時代」を生きている。彼女が日本社会に気づかせてくれたもの
「いい試合さえすればいい」は“おためごかし”
これはその後もしばらくやっていて、ある種の慣れになっていきました。制度として「負けたあとはインタビューがあるよ」ということが常態化すると、参加するMCたちも当然のものだと思って協力するようになります。
本来は負けたあとすぐに家に帰りたかったり、少なくともそのことについて振り返りたくない気持ちがある人でも、なんとなくシステムになってしまうと、それに慣れていく。これに「おかしいじゃないか!」と指摘があっても当然いいんですけど、常態化すると疑問を呈することが難しくなるということがあると思います。
MCバトルに関しては、アスリートとはちょっと意味合いが変わってくるところもあります。アスリートのエンタメ性は「いい試合をした結果」にあるという建て付けになっているからです。
でも、テレビ番組で取り上げられたり、スポンサーが付いたりする昨今のアスリートをめぐる状況では「いい試合さえすればいい」というのが、実は“おためごかし”というのがわかります。まあ、僕もそういった状況に加担していた時期があると、すごく思いました。
<TEXT/ダースレイダー 構成/bizSPA!取材班 撮影/山口康仁>