少女を誰が殺したのか?アメリカの隠された真実に迫る話題作
とはいえ、アメリカが抱える闇の部分をあぶり出すだけでなく、観客を魅了しているのはクライムサスペンスとしての息をつかせぬ見事な展開。結末へと向かう緊張感と臨場感には誰もが引きずり込まれてしまうはず。
全米でもわずか4館の限定公開で始まったものの、口コミで評判となり、4週間で2095館まで拡大されたほどの人気を獲得したのもうなずけます。
俳優陣たちの演技も見逃せない
そして、本作が成功した要因のひとつといえば、主要キャラクターの絶妙なキャスティング。
なかでも、『アベンジャーズ』や『ミッション:インポッシブル』シリーズなど、いまやハリウッドスターとしての地位を確立している主演のジェレミー・レナーは、癒えることのない傷を心に負った男を熱演。眉間のシワに苦悩の深さを感じさせ、細かな感情の起伏を体現しています。
さらに、娘を亡くしたネイティブアメリカンの父親を演じたギル・バーミンガムも、前作『最後の追跡』同様に力強い存在感を放っていますが、ジェレミーとの言葉を超えたやりとりには思わず込み上げてくるものを感じるはず。女性捜査官役のエリザベス・オルセンなど、脇を固める俳優陣の好演とともに見逃せないところです。
忘れ去れられた人たちの声なき声に耳を傾け、「成功しようが失敗しようが、作らなければならない映画だった」という監督の意欲に心を揺さぶられる本作。
これから先、まだまだ変化し続けていくであろうアメリカを見届けるためにも、アメリカのリアルに触れることができるフロンティア3部作は、いずれも必見の映画といえそうです。
<TEXT/志村昌美>
『ウインド・リバー』は角川シネマ有楽町ほか全国公開中
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