ディズニー時短で巨額赤字。オリエンタルランド、早期退職募集もやむなしのコロナ被害
コロナで大打撃を受けた業種のひとつがレジャー産業。2019年まで伸び続けていたインバウンド需要もほぼゼロとなり、様々な施設が休場、イベントも中止が続きました。
東京ディズニーリゾート(TDR)も2020年2月末から6月まで臨時休園を実施したほか、3回目の緊急事態宣言が明けて以降も、7月11日までは午前10時~午後7時までの時短運営を発表しています。
しかし、TDRを運営する株式会社オリエンタルランドは、一部社員の早期退職募集を始めるなど雇用を維持できないほど業績は悪化しているようです。ちょっと冷めた目線かもしれませんが、今回は決算資料から“夢の国”の経営状態を見ていきます。
ベテラン社員のリストラを実施
TDRは休園、時短営業に加え人数制限も実施したことで従来の収入が得られないのは必至となりました。業績悪化に歯止めがかからず給与・人員の見直しを余儀なくされています。
2020年の段階では非正規雇用を対象とした時給6割の休業手当のほか、手当を支給したうえでの退職、契約満了での退職などを実施しており、正規雇用に対しては賞与の7割削減と報じられていました。
しかし、2021年6月1日の「ダイヤモンド」編集部の取材で、ベテラン社員を対象としたリストラも実施していたことが明らかとなりました。以前からあった「ネクストキャリア支援プログラム」の対象を拡大し、45歳以上、勤続10年以上の社員を対象に、支援金を支給したうえで早期退職者を募集していたようです。応募者は3月末までに退職したとのこと。これはつまり、正規雇用まで手を付けなければならない状況になっているということですが、業績はどの程度悪化しているのでしょうか。
35周年イベントの時期までは好調
決算資料によるとオリエンタルランドの収入源は(1)テーマパーク、(2)ホテル、(3)その他の3つあり、コロナ以前の2019年3月期の売上高(全体比)は以下の通りです。ちなみにTDRが運営する直営ホテルは4つあり、いずれも1泊1人当たりで2万円以上と、庶民からは手が届きにくい価格帯で同社の重要な収入源であることがわかります。
(1)テーマパーク:4375億円(83.2%)
(2)ホテル:724億円(13.8%)
(3)その他:157億円(3.0%)
決算短信を参考にオリエンタルランドの業績を見ていきましょう。2017年3月期から2020年3月期まで売上高は、2017年:4777億円⇒2018年:4793億円(+0.3%)⇒2019年:5256億円(+9.7%)⇒2020年:4645億円(-11.6%)という推移。
売上高は入園者数にほぼ比例しており、公式サイトによると、2017年:3010万人⇒2018年:3256万人⇒2019年:2901万人です。2019年期が好成績ですが、これは2018年4月より実施した35周年イベント「東京ディズニーリゾート35周年“Happiest Celebration!”」が好調だったためでしょう。
利益面を見てみると営業利益は、2017年:1131億円⇒2018年:1103億円(-2.5%)⇒2019年:1293億円(+17.2%)⇒2020年:969億円(-25.1%)と推移し、最終利益は2017年:824億円⇒2018年:812億円(-1.4%)⇒2019年:903億円(+11.2%)⇒2020年:622億円(-31.1%)でした。
2018年期は準社員手当の増額などが影響し、利益がやや減りましたが、翌年度の35周年記念で伸ばした形です。
一方で2020年期の業績は減収減益と大幅に悪化していることがわかります。35周年記念の翌年とはいえ、その前の2018年期を下回っていますが、これは国内のコロナ感染が始まりTDRが2月末からいち早く臨時休園を実施したことに起因します。一方でこの時点では拡張計画や人員の確保を続けていたため費用が増え、利益が圧縮されたようです。