キレた店長から包丁が…それでも僕が回転寿司屋で働き続けた理由
それでも1年間働けた理由は…
ここまでのエピソードを聞くと、照村さんのことを喧嘩っ早い人だと思うかもしれませんが、決してそうではありません。彼は筆者の古い知人なのですが、喧嘩どころか怒る姿さえ見たことがない、とても温厚な人なのです。
「はじめはやられっぱなしだったけど、防衛本能で自然と手が出るようになりました。奴隷のような日々で常に殺意が充満して、あるときから食事をしても味がしなくなり……。それくらい精神的にも追い込まれていたんでしょうね」
いますぐ逃げ出したくなるような職場ですが、彼は身体をボロボロにしながらも「1年間は仕事を続ける」という入社当初の決意を貫ぬき、丸1年で退職しました。
「気がつけば、最後に取った休みはお盆で、208日連勤していました。体調を崩し、救急車に運ばれたことも2度ありました。ただ、曲者だったのは店長だけで、70人近くいたアルバイトの人たちはみんな良い人でした。店長の非道さもわかってくれてたし、その人たちの支えで1年間続けられました」
さらに店長がモンスター化した理由を、彼はこう分析します。
「異常な体育会系の社風に加えて、店長は思いやりがなかった。アルバイトの人から聞いたら、その人は過去のアルバイト時代から自分勝手で評判が悪かったらしくて。相手を思いやる気持ちがないと、人に攻撃的になってしまうと痛感しましたよ」
いまでは転職して、安定した仕事についた照村さん。過去を笑って話してくれましたが、はたから見れば笑えないレベルの環境でした。人によっては今もトラウマに悩まされていてもおかしくありません。いま彼が元気で働いていることが奇跡のように感じました。
<取材・文・撮影/ツマミ具依 イラスト/zzz(ズズズ)@zzz_illust>