自転車日本一周で得た“出合い”。名店で修行した「実力派カレー店主」を直撃
「感覚」でレシピを覚える
――7年はけっこう長いですよね。今でもインド料理作りの基礎の部分はアンジュナになるんですか?
礒邊:ベースはもう完全にアンジュナ。ボクのクセとかそういうのは完全にアンジュナですね。
――修行時代はどんなことを叩き込まれたのでしょう。
礒邊:感覚的なものですね。アンジュナは絶対にグラムとか量らないんですよ。パウダースパイスも横口レードルでパパッとやって、塩も手でつかんで。仕上がった状態を味見してもらって「もうちょっとコリアンダー入れようか」「油が全部出ちゃっているからクミンとコリアンダーを足して味を調えろ」とか、どうやるとこういう味になるみたいなことを体で覚えていきました。当時の自分のレシピメモにはマスタードシード指4本分とか書いてありましたからね(笑)。
――ボクが初めてお会いしたのは「エリックサウス」(都内に数店舗を構える超人気南インド料理専門)でしたが、オープニング(2011年秋)の時からいたんですか。
礒邊:オープニングの時はいなかったです。オープンする時はちょうどアンジュナを辞めて自転車で日本一周をしてました(笑)。
岐阜での運命的な“出合い”
――自転車日本一周ですか!!
礒邊:自転車でフラフラ走っている時にたまたま岐阜に行ったんです。駅のほうに向かったら、ミールス(南インドの定食)って書いてあるお店があったんですね。面白そうだから入ってみたら衝撃的に美味しくて。店員さんに話しかけたら、そこの運営会社が東京に南インド料理店をオープンするって教えてくれて。オープンする2週間前のタイミングでした。ボクはそのまま自転車の旅を続けて東京に戻ったのは1か月半後くらい。そのままその自転車でエリックサウスに行って後日、面接することになりました。
――アンジュナでは感覚的なことを教えてもらったそうですが、エリックサウスで叩き込まれことはどんなことですか?
礒邊:レシピをしっかり作ること。グラム管理をすることとかですね。人に教えるのも大事な仕事だったんで、玉ねぎもグラムで計って切ってました。数値化をしながらしっかりレシピを作っていくっていうのは、エリックサウスで覚えていきましたね。
――真逆ですね! 指4本分のマスタードシードではなく今度は大さじ3ですよと。アンジュナは北インド料理も提供してましたが、南インド料理の専門店で働くようになって何か感じることはありましたか?
礒邊:1つあるとしたら「ご飯とカレーってうまいな!」っていう(笑)。もともとボクはナンやパンがあまり好きじゃなかったんですよ。南インドはご飯文化じゃないですか。それがけっこうバチーンと来て「あー! 自分が好きなのは、要は南インドのカレーなのね!」とスッキリと腑に落ちて。カレーを作るにしてもご飯のことを考えればいいのですごく作りやすかったです。