幸楽苑vs日高屋、コロナ下で分かれた「人気中華チェーン」の明暗
徹底的にぜい肉を絞った幸楽苑
そんなこんなで、幸楽苑は日高屋の後塵を拝していたのです。過去5年を振り返っても、2社の差は歴然。日高屋は売上で幸楽苑を上回っているだけでなく、営業利益率で9ポイント以上も差をつけていました。
コロナ前の幸楽苑の業績推移をみると、明らかにおかしいところがあります。2018年3月期です。売上は前期比2%増加していますが、純損失を32億2500万円計上しています。
幸楽苑は2018年3月期に大規模な店舗整理をしました。収益性の悪い49店舗を閉店し、2店舗の造り替えを実施したのです。飲食店が退店する場合、店舗を現状復帰するための費用が必要になります。また、貸借対照表上に計上されている固定資産がなくなるため、その分を特別損失として計上しなければなりません。
外食企業が、収益性が悪い店舗の大量閉店に踏み込めない理由はここにあります。長期的に売上が減り、凄まじい額の損失を計上する必要があるからです。しかし、漢(おとこ)幸楽苑はそれを選択しました。収益性を改善することが、会社の成長に何よりも必要だと判断したのです。いわば、体が悲鳴を上げても筋肉をバッキバキに仕上げて次のステージに挑もうとしていたのです。
台風襲来の影響から持ち直すはずが…
その成果は翌2019年3月期に出ました。営業利益率は体を仕上げる前の0.4%から4.0%へと10倍もアップしたのです。幸楽苑の快進撃が始まるはずでした。しかし、2020年3月期に思いもよらぬ不運に見舞われるのです。
2019年10月、南鳥島近海で発生した低気圧が東経158度10分で台風となり、急速に発達して北上しました。後に新興お洒落タウン武蔵小杉を阿鼻叫喚の渦に巻き込んだ、台風19号です。この台風は幸楽苑の郡山工場を操業停止へと追い込みます。
郡山工場は東北、北関東、甲信越エリアに主要な食材を供給していました。工場が稼働できなくなったため、一部店舗の営業停止、または時短営業を余儀なくされました。難局に立たされた幸楽苑ですが、小田原の工場をフル稼働させることによって繁忙期の12月を迎える前に全店通常営業へと持ち込むことができました。
その矢先の出来事でした。新型コロナウイルスという外食最強の敵が姿を現したのです。