老舗出版社を買収した「まんが王国」運営代表に聞く、新たな展望
広告費やアプリ手数料を作家に還元
さらに昨今深刻な問題となっている海賊版サイト。電子コミックサービスは、ともすれば同一視されることもあるが、撲滅の施策として関連企業と協働での取り組みも行っている。
「1月1日から改正著作権法が施行され、海賊版のコンテンツを閲覧したユーザーさんも罪に問われることになりました。その法改正の内容を広くご理解いただく目的で、出版社・電子書籍販売サービス各社と共同でのキャンペーンを展開しています」
現在、電子コミックの市場規模は約3000~4000億円とされているが、その費用の多くがアプリプラットフォームの手数料や広告費に費やされている。そのことに一部ユーザーや権利者から批判の声もあるが、吉田氏はこう語る。
「健全な市場成長のためには、良質なコンテンツが量的にも質的にも生産され続けなければなりません。そのためには、コンテンツを制作されているクリエイターの方へ利益をしっかり還元していくことが不可欠だと考えています」
ネットだからこその強みを生かしていきたい
「アプリで課金するサービスの場合、30%をAppleやGoogleのプラットフォームへ支払うことになるが、まんが王国はWebサイトでコンテンツを販売する形式のため、それが大幅に抑えられる。また、ネット広告は入札型という仕組み上、資金を投入すればするほど効率が悪化する特性があることから、その部分を抑えることでクリエイターへの還元率を高めることが可能になります」
出版やテレビといった従来型の媒体の場合、そこで活躍できるクリエイターはごく一部に限られていた。ネットコンテンツは、より多くのクリエイターに機会を創出できる点が強みだという。
「これらは対立すべきものではなく、今後のものづくりは両方の要素を取り込んでいくことが必要になると考えています。ITというのはあくまでも手段ですが、紙を印刷して配本して売るという仕組みの中では得られなかった情報が、ITサービスによって得られるようになるケースも多いと思います。
それをものづくりに活用する仕組みと、従来の漫画作りのノウハウや経験が融合していくことを目指していきたいと考えています」
<取材・文/酒井麻里子>