老舗出版社を買収した「まんが王国」運営代表に聞く、新たな展望
スマホ時代になり、ニーズが多様化
スマホ以前のガラケー時代からサービスを展開している同社だが、その市場の変化をどう見ているのだろうか。
「十数年前の市場規模は400億から500億円程度だったので、現在はその10倍近くに拡大しています。スマホの登場によって、顧客あたりの購入単価・利用単価ともに大きく向上したことに加えて、電子コミックで読まれる作品のジャンルもより多様化しています。
さらに、スマホ時代になり、端末が大画面化したことで、単行本の紙面を単にデジタル化しただけのコンテンツに加えて縦スクロールのコンテンツが登場しました。ほかにも、読みたい漫画を選んで購入する『指名買い』だけでなく、暇つぶしのニーズが増えたりと、読まれ方や読まれるシーンもより多様化していますね」
業界の垣根はさらに低くなっていく
「従来の出版業界は、作家さんと出版社さん、取次さん、書店さん……という形で、水平分業がきっちり確立していますが、電子コンテンツの場合、我々のような配信会社がコンテンツを作ることもありますし、出版社さんがアプリを作って作品を訴求するケースも増えています。そういった垣根のようなものは、今後ますます低くなっていくだろうと予測しています」
だが垣根が低くなったとはいえ、すべての出版社や書店と連携することは現実的ではない。「まずは、ぶんか社との垂直統合でコンテンツ制作を進めながら、他社の作品についても協業という形で扱いを増やしていくことを想定している」と、吉田氏は言う。
「水平分業でコンテンツを生み出す従来のスタイルは、クリエイターとユーザーの距離が遠くなりがちでした。これは電子コミックに限った話ではなく、SNSや動画配信サービスの状況を見ていても、今後は創作者と閲覧者の距離が近くなっていく流れは必然だと考えています。
我々は以前から漫画やイラストに特化したクラウドサービスやEC、イベントプロデュースなどを手がけてきましたが、今後もコンテンツプロデュースカンパニーとして、そういった取り組みを推進していきたいと思います」