Aマッソ加納が思い描く女芸人の“アガりの姿”「私がロールモデルになったる」
女芸人に求められるのはブスキャラやデブキャラ、非モテキャラばかり。そんなフォーマット化した風潮に不自由さを感じ、容姿や性別に左右されない発想の飛躍やワードセンスで勝負し続けるのが、女性お笑いコンビ・Aマッソ(村上 愛・加納愛子)だ。
「進路相談」というコントでは、「Aマッソみたいな女芸人が一番嫌いやねんな。見方がわかれへん」「女芸人が最近がんばってるみたいに言われとるがあれ嘘やぞ! テンプレートが蔓延してるだけじゃ!」と、女芸人の消費のされ方を自虐的に批評するネタで、一躍注目を集めた。
自分の話をするのは「恥ずい」
そんななか、ネタ作り担当の加納愛子が新たな才能を開花させたのが執筆業。発売中の初エッセイ集『イルカも泳ぐわい。』では、お笑いと同様、身辺雑記に終始しない妄想ネタを繰り広げている。だが、そんなスタイルを貫く理由は、意外にも自分の話をするのが“恥ずい”からだという。
「私自身が変わった人間だったら『この人、こんなん考えているんか』で商品になるけど、まともすぎて面白みに欠けているから、フィクションのほうがまだ戦えるかなと思ってずっとお笑いをやってきました。
それに、もともと『わかるわ~』と自己投影できるような物語には興味が持てない。あるあるネタも、自分が抱いた感情を肯定してもらえている気がするだけだと思ってしまって」
「二重にこじらせてました(笑)」
「だから、エッセイの内容も『ちょっと怒られるかな』とおどおどしつつ、徐々にネタに寄せていったんです。連載の3回目に、冷蔵庫のれんこんと会話する原稿(書籍収録『お前は穴や、』)を書いたとき、担当編集者に『こういうの好きです』と言ってもらえて、“ああ、こっちでいいんだ”と自信が持てましたね」
「女芸人」というだけで玉石混交が括られる違和感から、2018年と2019年は「女芸人No.1決定戦 THE W」への出場を見送った。本人いわく、「芸人として、女芸人として、二重にこじらせてましたね(笑)」という時期だ。
しかし、もろもろ吹っ切って臨んだ2020年は見事決勝に進出。コントでも漫才でもOKなシステムを逆手に取り、プロジェクションマッピングを使った「映像漫才」という画期的なネタを披露して話題となった。こじらせ期を脱したきっかけは、お笑い界の環境の変化や、YouTubeで動画配信を始めたことが大きいという。