コロナでラーメン店の倒産は過去最多。飲食店主たちの悲鳴
店からも国からも休業補償がもらえない
「4月の緊急事態宣言で『国から補償金が支給されるみたいだから連絡を待ってくれ』とバイト先に言われ、『いつ営業再開してもいいように予定を空けて待機してほしい。待機代も出すから』とも指示されていましたが、結局お金はもらえませんでした」(32歳・男性・大手居酒屋)
「『休業補償として給与の半分は出す』と聞いていたのに、緊急事態宣言が明けても客足が戻らないことを理由にいつまでも支払われません。問いただすと『こっちの事情もわかってくれ。国の補助金が入ったら払うから』と懇願されました。
そのくせ、オーナーは持続化給付金や協力金などの国の補助金を全部手に入れたあと飛んだんですよ。ありえないです」(45歳・男性・スポーツバー)
アルバイトの休業補償がもらえないケースが多発している。事態は深刻で、厚生労働省が休業補償を支払うように企業に要請しても、応じなかった大企業が少なくとも25社あると判明。ラーメンチェーン「一風堂」のアルバイトが休業手当を求めて会社に団体交渉を申し入れたが、コロナ禍で無情にもアルバイトを斬り捨てる流れは今後も加速していきそうな気配だ。
シフト減を証明できるものが手元にない
「『シフトが出ている期間までの休業補償は出します。ただ、それ以降は難しい』と会社に説明されました。労働基準法に基づいてシフトを出していなくても補償対象になること、コロナの休業補償制度を利用してほしいことを嘆願書に書いて直談判しましたが『働いてないのにお金をもらおうなんて。法律をかさにかけてくるなら雇えない』と拒否されました」(27歳・女性・バーベキュー施設)
この女性は、労働基準監督署に相談し、国から直接お金を受け取れる休業支援金・給付金制度を利用して月収の8万円をもらうことができた。だが、とりこぼされてしまうケースもあるようで――。
「手続きをやってみようといろいろ調べたんですが、シフトが減らされたことを証明できるものが手元に一切なくて、申請できませんでした。シフト希望の紙やタイムカードは店に回収され残っていませんし、給与は手渡しで給与明細もありません。
お店は時短営業で1日6万円の協力金をもらえるのに、得をするのはお店だけ。今本当にお金がなくて口座に395円しかないんですよ。新しいバイトを受けてもコロナで全落ちしてます」(24歳・女性・カフェ)
街には閉店や空きテナントが目立つようになり、その分だけ雇用が失われている。東京商工リサーチが中小企業を対象に実施した昨年12月の調査によると、飲食店の廃業検討率は3割を超えたという。緊急事態宣言が解除されても、まだまだ飲食業界の苦しみは尾を引くだろう。
<取材・文・撮影/週刊SPA!編集部>
【田中一明】
“ラーメン官僚”としてメディア出演や執筆活動を行う。年間700杯以上のラーメンを10年間食べ歩く。通算1万6000杯。Webマガジン「食楽web」にて連載中
【小林富雄】
愛知工業大学経営学部経営学科教授。食品ロスについて専門的に研究しており、持ち帰り用の専用容器「ドギーバッグ」の普及活動も行っている