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コロナでラーメン店の倒産は過去最多。飲食店主たちの悲鳴

ビジネス

熾烈なラーメン競争、生き残るのは?

飲食業界

田中一明氏

「客側の一回一回の外食の機会を大切にしようとする意識が強まったように感じます。例えば恵比寿『綾川』が提供する親鶏ベースの濃厚青竹手打ちラーメンのような、“この店のこの味”が客に強く求められている。これからは、ほかにない付加価値の高い、より創作性の高い味を出す店が生き残り、どこでも食べられるような特徴のない味を出す店は苦しくなるでしょう」(田中氏)

「薄利多売」が特徴であったラーメンビジネスは今、大きな転換期を迎えている。コロナ時代の“ラーメン生き残り戦争”を制するのは、並大抵ではなさそうだ。

 コロナ禍で飲食業界が頭を抱えているのは、売り上げだけではない。客足の減少や相次ぐキャンセルによるフードロスだ。とりわけ、素材の単価が高い高級飲食店は大打撃を受けている。

「年末はお客さんが伸びずロスが増えたので今は完全予約制。それでも当日キャンセルが多く仕込みをしていた品がムダになって困っている」とは恵比寿で高級焼き鳥店を営む河合雄介さん(仮名・42歳)。「『体調が悪い』と言われるとお金も取れません」と嘆く。

「年末に頼んだ在庫は廃棄した」

飲食業界

写真はイメージです

 過去には「GoToイート」を悪用してポイントを稼ぐ詐欺問題や居酒屋の無断キャンセルで逮捕に至った事例も。こうしたキャンセル問題についてフードロスを研究する愛知工業大学教授の小林富雄氏はこう語る。

「日本人は気遣いをする国民性なのでキャンセル料を取ることに抵抗がある人が多い。なので政府がキャンセル料のルールを厳格化して、店の負担を減らすべきです

 また、高級フレンチでシェフをする吉岡卓三氏(仮名・50歳)は「今は休業中なので仕入れはないが、年末に頼んだ在庫は賞味期限になり廃棄した」と言う。これに対して小林氏は「飲食店は在庫を置きすぎている」としたうえで、「日本は欠品や品切れに厳しい。希少部位や季節の品などは欠品になっても仕方ないと思う習慣が高級店に行く客層にもっと浸透されるべきだ」と熱弁する。

「店側に関しては宅配サービスを柔軟に使ってロスを削減し、SNSで“量より質”のイメージをつける宣伝をするなど、ITを駆使してほしいです」

 最後に小林氏は国や自治体への要望として「時短営業の再検証をしてほしい。人数制限や滞在時間を制限すれば、20時閉店にしなくて済むのでは。通常通りの営業時間に変えれば、客足は増えてロスの心配も減る」と一石を投じた。コロナ禍が長期化し営業で手いっぱいの飲食店。ロス削減にはしばらく時間がかかりそうだ。

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