苦境の「かっぱ寿司」に聞いた生き残り策は“回転寿司屋からの脱却”
トライ&エラーできる企業へと転身
とりわけ販促活動においてはマーケティング部を立ち上げ、役割ごとにPRやWeb、宣伝などの専任職を置き、数字が追える体制を整えた。直近2年間はプラスに転じるための下積みとして「組織の活性化やチームの立ち上げといったトライ&エラーを繰り返してきた」と牛尾氏は振り返る。
「足が遠のいたお客様に、再び来店してもらうため、メニュー開発やキャンペーン施策、販促活動、新カテゴリーの創設などさまざまな挑戦をしてきました。出だしは赤字でもできるところから始め、業績が改善されるにつれて、『トライ&エラーできる企業体質』に変わってきた。ようやくスタート地点に立てたと思っています」
筆者は今回の取材のために「三鷹店」と「大和下和田店」に出向いた。前者は最寄りから徒歩30分、後者は徒歩15分。日常生活圏内でないと、なかなか足を運びづらいと感じた。
「立地や店舗数は正直言って他社にはかなわないと思っています。基本はメインターゲットであるファミリー層を中心にロードサイド店舗が多いのが現状です」
フルオーダーで回転寿司屋からの脱却を
では、他社と対抗するため、どのような点で差別化を図っているのだろうか。牛尾氏は「回転レーンをなくしたフルオーダー型が強み」とし、次のように説明する。
「お客様ごとに注文をお受けして鮮度の高い寿司を提供できる『フルオーダーシステム』を導入しています。まだ全ての店舗では実施していませんが、“まるで寿司職人がその場で握って提供する”体験を提供し、回転寿司チェーンからの脱却を図りたいと考えています」
回転寿司の楽しみといえば、たくさんの寿司ネタがぐるぐると回るなかで、食べたい寿司を選べるというところだが、これをなくすという。
「回転寿司にすれば、エンタメ性は増えるものの寿司ネタの鮮度や美味しさは間違いなく犠牲になってしまう。安っぽいと言われているのに、回転レーンで提供したら本末転倒だと感じたのです。今は店舗をフルオーダー型に順次切り替えています」