29歳商社マン、初のアフリカ出張。意外な日本製品がワイロ代わりに
現地コーディネーターが活躍?
「出発前に先輩から、文句を言ったり非難するのは相手の面子を潰して面倒事になる可能性もあるから言い方を気をつけるようにアドバイスを受けていました。そこであくまでお願いという形にしてひたすら頼み込んだんです」
無事に入国してホッとしたのも束の間。関根さんの目的地はそこから数百キロ先の地方都市でした。その間には複数の検問があり、ここでも職員たちが同じように賄賂を要求してきたのです。
「手配した現地コーディネーターの車で向かい、彼から話は聞いていましたが本当にタチが悪った。露骨に『マネー』と言われましたし、入国審査のときのように粘れば引き下がってくれる感じではありませんでした」
ただし、対応はコーディネーターに任せており、事前の取り決めで少額であれば賄賂を渡すことも容認。ところが、彼はなかなか賄賂を渡そうとしませんでした。
「真意を確認したわけじゃないですが、賄賂の支払いを抑えられたら自分の報酬が増えると思ったのかもしれません。最終的には賄賂を渡すことになったのですが、ドヤ顔で『最初100ドルと言ってきたが、20ドルにまけさせた』って。ただ、地元の人は簡単なチェックで通過できるのに、こっちは日本人の私がいたせいか20分近く足止めを食らうし、あれはさすがに参りました(苦笑)」
日本製のボールペンが賄賂代わりに
だが、ここで効果を発揮したのは日本製のボールペン。現地でのバラマキ用にあらかじめ準備していたもので、賄賂を求められたらそれを渡すように指示。すると、次の検問からはほとんど待たされずに通れるようになったとか。
「仕事関係の方に配ろうと思ったもので1本1000円くらいするちょっと見栄えのいいやつでした。それをコーディネーターが『1本100ドルの日本製高級ボールペン』と話を盛りまくって渡していました。相手は喜んでいたからよかったですが、私は小心者なのでハッタリがバレたらどうしようって気が気じゃなかったですけどね」
それでもこのハードすぎる出張が自身にとって大きな経験になったのは事実。しかし、当の本人は「役人や警官が賄賂をせびってくる国にはもう行きたくない」とうんざりした様子で話します。
「早くコロナは沈静化してほしいけど、そうなれば今はストップしているアフリカなど途上国への出張も再開されます。そう思うと素直に喜べないので複雑ですが……」
20代で海外出張なんていかにも勝ち組っぽく見えますが、彼のような苦労を味わっている人も少なくないのかもしれませんね。
<TEXT/トシタカマサ イラスト/パウロタスク(@paultaskart)>