女 VS 男、世紀の戦いの勝敗は?驚きの実話に米トップ俳優が挑む
これまでもスポーツが歴史を動かしてきたことは数多くありますが、そのなかでも男女平等問題に一石投じたこの試合は、女性の権利についての議論が盛んになっているいまだからこそ、知っておきたいところ。
というと、「フェミニズムの映画なのでは?」と男性は身構えてしまうかもしれませんが、そこはご心配なく。
社会問題を軸にしながらも、映画としてのエンタメ的要素もバランスよく散りばめられており、スポーツ映画としての迫力あるテニスシーンやビリー・ジーンのラブストーリーなど、幅広く楽しめるのが本作の見どころ。
監督はじめ『スラムドッグ$ミリオネア』を手掛けた製作チームによる手腕が光る演出となっています。
実力派俳優たちのリアルな役作りバトル!
特に、ボビーを単なる嫌われ者や“男性優位主義のピエロ”にしてしまうのではなく、元世界チャンピオンとしての葛藤や妻への思いなど、その背景も映し出すことでキャラクターとしての奥行きと人間臭さをきちんと描き出しているのもさすが。
それによって、憎めない存在へと昇華されていますが、それを見事に体現しているのは名優スティーブ・カレルです。樹脂で作った出っ歯を付け、特別な髪染めを使って役作りしたという外見は、本人と見間違うほどの仕上がりとなっています。
一方、ビリー・ジーンを演じたエマ・ストーンも負けず劣らずの熱演で応戦。
起用された際には、まったく似ていないルックスとテニス経験ゼロが懸念材料ではあったものの、そこはオスカー女優としての本領を発揮し、4か月の猛特訓で7キロも筋肉をつけたといいいます。
その甲斐あって、強さと美しさを兼ね備えた稀代の女子テニスプレイヤーを文句なしで演じきっていますが、そんな俳優陣の演技バトルも見逃せないポイントです。
男女平等社会は一人ひとりの意識から
先日、本作のプロモーションで来日したデイトンとファリスの両監督に取材する機会に恵まれましたが、そこで印象的だった言葉があります。
それは「アメリカでは黒人の大領領が誕生し、ついに女性の大統領が誕生するかという希望があったのに結局は何も変わらず、まだまだ戦いは終わらないんだ」という2人の訴え。
よりよい社会に変えていくためには、どれだけ時間がかかったとしても、たとえ少しずつだとしても、一人一人の意識から変えていくことが求められているのです。まずは、この映画を観ることから小さな一歩を踏み出してみては?
<TEXT/志村昌美>
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』はTOHOシネマズシャンテほか公開中