24歳起業家、光触媒コーティングで「ウイルス不活性化」を目指す理由
「光触媒ってなんやねん」
こうやって丁寧に説明されれば、その効果も理解できた気がするが、当初は地元京都の営業先でも「光触媒ってなんやねん」などと返される日々だったという。
「営業に行っても、説明だけで1時間半かかる日々でした。常に70枚くらいのパワポ資料を持ち歩いて、商談の話題になる前に時間切れということも少なくありませんでした」
それでも光触媒について知ってもらいたいという一心で営業活動を続けていったという小田氏。その背景にあるのは「光触媒の誤解を解きたい」という思いだった。
「一部の業者が間違った認識で販売を行っていたり、汎用性が高いがゆえに過大な表現をしてしまったりしているせいで、いまだに光触媒に良くないイメージを持つ人もいます。実際、光触媒には机、パソコン、紙など素材によって適切な液剤が異なりますが、ほとんどの業者が液剤をなんとなく購入しているようです。
ただ、私自身、光触媒について調べれば調べるほど、汎用性も、安全性も高いことを実感したんです。そのためONEでは生産機能に力を入れていて、自社工場で試験を重ねて、消臭、汚れ防止など目的にあった液剤を、その都度、調整してピックアップしています」
すべてはきっちり事実を伝えるため
「私の家業である不動産業というのも、あらかじめ不動産の良くないポイントも簡潔に伝える必要があります。『重要事項説明書』と言って、物件を借りるときに、部屋の状態などをしっかり事実だけをお伝えしています。相手に良い印象を与えたいからと、瑕疵を伏せたり、ごまかしたりしたらアウト。光触媒もきっちり事実だけを伝えたいんです」
そのためONEでは導入コンサルティングからコーティング施工、さらにはコラボ製品開発まで、ワンストップで提供する「FRESHION(フレシオン)」というサービスに力を入れている。これも、事実を正確に伝えたいという思いから生まれたという。
「起業してから間もないうちは、光触媒の卸業だけを行うつもりでしたが、いろいろな業者をあいだに挟むことで、自分たちの意図が正しく伝わらないかもしれないと感じたのです。それなら自社で開発からコーティング作業まで行うことにしました」
また商品開発を大阪にある科学や技術のコンサルティング・研究機関の「ゼロイチ研究所」と共同で行っている。
「第三者的に私たちの研究をフォローしてもらいたかったのですが、最初にお会いしたときは詐欺師だと思われたみたいで(笑)。それから実証実験の結果や取り組み姿勢をお見せして、話し合いも重ねることで、ようやく信頼していただけるようになり、いまでは共同で光触媒の研究開発を行っています」