中国への不信感が高まるインド。日・米・豪・印で合同演習する意味
中国への不信感が顕著に
以前、モディ首相はインド太平洋構想について、「排他的なものであってはならない」と発言し、2017年には日米印の共同軍事演習“マラバール”への参加を打診したオーストラリアの要請を拒否した過去がある。
その当時、モディ首相は経済的結び付きから中国へ配慮する姿勢を示していたが、第2次政権になって初めての訪問先にモルディブとスリランカを選んだように、2019年夏以降からは中国への不信感が顕著になってきた。
最近になってインド国防省はマラバールにオーストラリアが参加することを発表した。これは安全保障上大きな変化であり、インドの「中国離れ、日米への接近」を加速化させている。
台湾との結びつきも深まるか
また、モディ政権は、中国を刺激するかのように、台湾との間で通商協定に関する協議を正式に開始させる計画を進めているという。インド政府内で、台湾との経済関係を促進させる計画に支持派が増えているとされるが、実際、インド・台湾間の貿易総額は2019年に72億ドル(約7600億円)に達し、前年比で18%も増加した。インドが経済的に台湾に接近することになれば、印中関係の悪化は避けられないだろう。
そして、最新の動向で、モディ政権は10月27日、米国と外務防衛のいわゆる2プラス2会合(2カ国の外交担当閣僚と防衛担当閣僚が安保政策や防衛政策について話し合う枠組み)を開催し、衛星や地図データなど機密情報を共有するなど防衛協力を深める協定に署名した。
会談に参加したポンペオ国務長官とマーク・エスパー国防長官は、「両国が協力して中国による安全と自由への脅威に立ち向かう必要がある」とし、今後米印の間で安全保障協力をいっそう深化させていく意思を表明した。
こういった状況のなか、日本の菅義偉首相もインドとの安全保障協力を独自に進めて行く必要がある。菅首相は就任最初の訪問先としてベトナムとインドネシアを訪問したが、今後はインドもミャンマーなどを中心にASEANへの接近を図ってくることだろう。ASEANはインド太平洋構想の要衝にあり、日印で協力できることは多い。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>