32歳・元“歴ドル”社長が起業を決意した「祖母の入院」と「三方よしの精神」
スキルに合わせて幅広い依頼が可能
家事代行やベビーシッターに特化した既存のサービスはあるが、「東京かあさん」では料理や掃除だけでなく、話し相手やベビーシッター、ペットの世話など幅広く頼めるのが特徴だ。
「世の中には料理が下手なお母さんもいますよね。『東京かあさん』は家事代行ではないので、かあさん(登録者)は家事や料理、掃除のプロでなくてもいいんです。その人の良いところを生かしてもらえればいい。そのためには利用者の方とのマッチングが重要です。
当社はただ派遣するのではなく、かあさんのスキルや性格も考慮して、利用者と繋げる仲人役を務めています。弊社では“おやこンシェルジュ”と呼んでいるんですが、信頼関係構築のお手伝いをするのも独自の強みだと思います。私自身も自社サービスを使っていて、『もっと規則正しい生活をしなさい』『ちゃんとご飯を作りなさい』と叱られます(笑)。口うるさく感じる時もありますが、本当にありがたい存在なんですよ」
事業が拡大し、芸能界引退を決意
その結果、売り上げは年々右肩上がりで推移。現在は年商3000万円、3人の社員を抱えるまでに成長した。事業が拡大するにつれて芸能の仕事以上のやりがいを感じるようになり、起業家という立場で社会貢献したい気持ちが強くなっていった。そして、ついに17年間、身を置いた芸能界からの引退を決意した。
「芸能界もスタートアップ(起業)も一握りしか成功できない、決して甘くない世界です。でも、私は同時にいろんなことができる能力があるスーパーマンではありません。だから、社長業に専念する決意を固め、今年の年明けに所属事務所に引退の意志を伝えました」
人生を大きく左右する決断に、不安はなかったのか。
「芸能のお仕事をやめてから収入は激減しましたが、不安は全くなかったですね。私の役員報酬は20万円で、手取りだと16万円くらい。もちろん社員の給与より全然少ないですよ。そこは“石田三成方式”、家臣の島左近のほうが俸禄が高いみたいな(笑)。別会社の通販事業からの収入もあるので、最低限生きていくお金があればいいんです。収入が減ることよりも、全力を注ぎたいことに限られた時間を使わないほうがもったいないですから」