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東京メトロ03系がなぜ長野に?長野電鉄3000系デビューを追う

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 東京メトロ(旧営団地下鉄)日比谷線の第2世代車両として、長らく活躍した03系が2020年2月28日をもって、32年の歴史に幕を閉じた。軽量に定評のあるアルミ車体に加え、18メートル車は、複数の中小私鉄で新たな歴史を刻むことになった。今回は「3000系」として新たなスタートを切った長野電鉄を紹介しよう。

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日比谷線の第1・2世代車両が長野電鉄で再会(提供:長野電鉄)

日比谷線の第1・2世代車両が26年ぶりの再会

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長野電鉄8500系は長野―信州中野間の限定運用

 長野電鉄は2005年から2009年にかけて、東京急行電鉄(現・東急電鉄)8500系を6編成18両導入し、自社各駅停車用の8500系として営業運転を開始した。これに伴い、自社オリジナルの特急形電車2000系、日比谷線第1世代車両の3500系(2両車)、3600系(3両車)の一部を置き換えた。

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長野線信州中野―湯田中間は勾配が断続的に続く

 しかし、8500系は抑速ブレーキ(下り勾配でも一定速度に保ったまま走行できる)を装備しておらず、40パーミルの急勾配が存在する長野線信州中野―湯田中間に入線できない。同区間の各駅停車は日比谷線第1世代車両3500系、3600系の独壇場であったが、寄る年波には勝てなくなってきた。

 長野電鉄が“次世代の中古車”を探したところ、「当社にあった仕様(18メートル車×3両)であり、3500系、3600系の取替時期と一致したことによる」(同社談)が決め手となり、日比谷線第2世代車両の03系を導入することになった。奇しくも日比谷線車両の世代交代が、26年ぶりに同社で“再現”することになったのだ。これに伴い、将来の各駅停車は全列車3両編成に統一される。

新型コロナウイルス禍で波乱の幕開け

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JR貨物の越谷貨物ターミナルで数日待機したのち、新天地の長野へ

 同社は3000系搬入直前の2020年1月31日、03系5編成15両の導入を発表。2019年度は2編成6両が長野入りし、須坂の車両基地で営業運転に向けた準備が進められた。なお、車両を03系から「3000系」に変えたのは、同社の称号規程による。

 2020年3月23日から26日にかけて、前面を赤帯に“お色直し”。試運転も順調に進み、当初はゴールデンウイークにデビューする予定を立てていた。しかし、新型コロナウイルスの影響で延期。計画されていた報道公開も白紙となった。

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3000系は緊急事態宣言の全面解除後に営業運転を開始(提供:長野電鉄)

 デビューしたのは同社創立100周年にあたる5月30日、須坂8時18分発の各駅停車長野行き(各駅停車は全列車ワンマン運転)で、メディアを披露することもなく、ひっそりと出発式が執り行なわれた。意外なことに、営団地下鉄や熊本電気鉄道では、デビュー記念の出発式が開催されておらず「旧03系」ながら初のヒノキ舞台となった。

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長野線長野―本郷間は、1981年3月1日(日曜日)に地下化された

 開幕戦は長野―須坂間1往復運転のあと、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、翌日より営業運転を見合わせていたが、6月22日より再開された。

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