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コロナ禍で後がない北朝鮮…突如「核製造疑惑」が浮上したワケ

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北朝鮮は米大統領選を注視?

 北朝鮮は2020年11月3日に実施予定の米国の大統領選の行方を注視しているはずだ。朝鮮中央通信は7月10日、正恩の妹である金与正朝鮮労働党第一副部長の談話を発表し、「米国の対応に変化がなければ、今年中また今後も米朝首脳会談を開催することはない」との意思を示した。

 同選挙が近づくにつれ、例えば秋口に再び日本海に向けてミサイルを発射したり、南北国境付近で威嚇的行動を取ったりするよう可能性もありえる。これまでも北朝鮮情勢がニュースや新聞で報道されないタイミングで、ミサイルを発射したことがたびたびあった。

 主要な世論調査では、11月の大統領選挙の対立候補である民主党のバイデン候補が、トランプ大統領をリードする展開となっている。リアルクリアポリティックスの最新世論調査(6月1日~23日)でも、支持率で10%ほどリードする展開となっている。

 しかし、北朝鮮にとってトランプは歴代で初めて会ってくれた米大統領である。このまま北朝鮮が腕をこまねいているとは考えにくい――

北朝鮮にとってはトランプのほうが…

米朝国旗

 将来の米朝交渉を踏まえると、現体制の北朝鮮にとってはトランプが再選してくれたほうがやりやすい。外交政策はそれほど明らかになっていなバイデン候補はバラク・オバマ前政権の副大統領である。

 仮に当選するとオバマ時代の“戦略的忍耐”政策に回帰し、核廃棄などの要望に応えなければ、金正恩や与正とそもそも会おうとしなくなるのではないか。今日、彼らはトランプ再選後のシナリオ、もしくはバイデン勝利後のシナリオといったいくつかのパターンを必死でシミュレーションしているのでは。

 その一方で新型コロナウイルスの感染拡大によって、今年1月から中朝国境が閉鎖。物資の9割以上を中国に頼る北朝鮮は依然として苦境に立たされている。

 他方、中国は新型コロナの感染拡大を抑え込んでいる状況が続いている。近いうちに金正恩や与正が、物資援助や貿易再開などを目的に訪中するプランも練っているかもしれない。いずれにせよ北朝鮮を巡る緊迫した情勢は余談を許さない。

<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>

国際政治学者。首都圏の私立大学で教鞭をとる。小さい頃に米国やフランスに留学し、世界の社会情勢に関心を持つ。特に金融市場や株価の動きに注目し、さまざまな仕事を行う。100歳まで生きることが目標

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