「いきなり!ステーキ」運営会社が114店閉店。原因は急すぎた拡大か
スタッフ1人あたりの利益額が減少
なお、今回は1店舗あたりの配置スタッフ数も算出しました。店舗運営にはアルバイトスタッフの存在も重要であるので、今回のグラフは「各事業のスタッフ総数(正規・非正規合算)÷店舗数」で算出しています。
グラフにまとめてみると、ペッパーランチ事業の配置スタッフ数が極端に少ないです。この点がペッパーランチ事業において店舗当たりの利益額が低いにもかかわらず、1人あたりの利益額が高い理由でしょう。
一方、いきなり!ステーキ事業は、ペッパーランチ事業と比べて、店舗当たりの配置スタッフ数も手厚い(7~12倍)です。店舗が急拡大した2017年12月期→2018年12月期においても店舗当たりの配置スタッフ数は大きく変わっていないので、売上面で勢いがあった2015年12月期のコスト想定から大きく変えないまま、どんどんスタッフと店舗を増やしていったことがわかります。
改めて、ペッパーフードサービスおよび、いきなり!ステーキ不調の原因は「店舗の急拡大による自社内競合」と「人件費コスト管理の不適切」の2点によって、事業から出ている利益を食いつぶしているにまとめられることが示されました。
コスト管理が不適切であっても、それ以上に利益が出てしまえば、この弱点には気づきにくいですが、月次報告の公開のタイミングが遅く、振り返りと対応のスピードが遅れていることは致命的であり、このままでは現状からの回復も難しいでしょう。
不祥事が過去15年で頻発している
さて、働く側としてはどうでしょうか。実際に働いた時の実感に関わる「給与」「社長など有力者のエピソード」「不祥事の有無」を財務諸表・各種ニュースから確認していきます。
ペッパーフードサービスの場合、「いきなり!ステーキ」「ペッパーランチ」などの事業部を同じ会社に抱えており、平均年収の母集団も最低でも300人以上を対象としているため、平均年収=現場の平均年収と見なしてよいでしょう。
平均年収はここ5年間で20万円ほどアップしており(2015年12月期480万円→2019年12月期:500万円)、また飲食業の平均年収は294万円に比べて、年収水準は高いことが伺えます。さらに前述したように1店舗あたりの人員配置が多いため、働く側としては比較的楽な現場でしょう。
ペッパーフードサービスを語るのに、創業者であり、名物社長の一瀬邦夫氏のことは避けて通れません。店舗のポスターやホームページ、さらにはメディアにも頻繁に登場し、いきなり!ステーキが業績不振に陥った2019年末には「社長直筆のメッセージ」を店内に掲出しました。ただ、これについては消費者から反発を生み、SNS上で大きく話題になりました。
また、ペッパーフードサービスは大きく報道された不祥事が複数あり、コンプライアンス上の懸念も大きいです。ペッパーランチでは強姦拉致事件(2007年5月、店長・店員が女性客を監禁)やO-157による食中毒事件(2009年9月)、いきなり!ステーキでは広告宣伝車による交通死亡事故(2016年5月)、店舗火災(2016年12月)などがありました。