出勤再開で「会社に行きたくない」症候群の人たちへの処方箋
緊急事態宣言が明けて、オフィスビルにもサラリーマンの姿が戻りつつあります。新しい生活様式で、これまでと変わりない日常が戻ってくるのでしょうか。
これまで10年以上にわたって、のべ8000人以上のカウンセリング、ストレス研究をしてきたヒューマン・ケア科学博士の舟木彩乃さんは、緊急事態宣言解除後も「悩み相談件数は減ることがなく、むしろ増えています」と語ります。
日々のストレスや不安、悩みを乗り越える感覚をつづった『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館新書)の著書を持つ彼女にアフターコロナの対処法について話を聞きました。
コロナに罹患したら…不安な日々
まず緊急事態宣言の前後で、舟木さんのもとに寄せられる相談にどのようなものがあるのでしょうか。
「相談内容のひとつに『感染したらどうしよう』があり、これは2種類に分けられます。1つは基礎疾患があるので重症化が怖いなど自分の健康状態から来る不安。もう1つは、医療従事者や教員、販売員など多数の人と会わなければならない人の感染機会が多いがゆえの不安や、社員だけでなくパート勤務の人にも多い社会的な不安についてです」
万一、コロナに罹患したら、数週間の休職を取らざるを得ず、差別や事実上の解雇の不安がある。緊急事態宣言解除後、こうした「社会的な不安」に関する相談が増えたといいます。
「上司や同僚、お客様などを、自分が感染したら濃厚接触者にしてしまうのではないかという不安を持っている人がいます。自分が感染した場合は、自分が移された側だという可能性もありますが、罹患して休職したら結果的に差別されるのは自分になります。
また、復職したときに同じ職場でやっていけるのか、特に地方の企業や中小、個人経営など逃げ場がない職場では、会社側(雇用主)が感染した社員を守ってくれるように思えないなどと思い悩む人も多いです」
家庭でもコロナで居心地の悪さが
社会的な不安は雇用関連だけではありません。家族、友人などと「コロナ」関連の話で微妙に価値観が合わず、居心地の悪さが浮き彫りになってしまうケースもあるそうです。
「コロナ下では、芸能人が緊急事態宣言下に旅行や外食をしていたことについて意見が合わなかったり、マスクや消毒をしない人をどう思うか話し合っているうちに口論に発展してしまったり、ということが起こっています。外出自粛をきっかけに身近な人が自粛警察になってしまった人もいて、他人の予想外の考え方や行動を知って悩んでしまう人も多いようです」
たしかにワイドショーの影響を受けて同僚が“感染症のにわか専門家”になっていた……なんてこと、この状況下で誰しも経験があるでしょう。とりわけ昨今はテレワークという非対面コミュニケーションが浸透していることもあり、それならではのトラブルもあるといいます。
舟木さんのもとにも「部下からの返信や報告が遅い」「チャットでのコミュニケーションで傷ついた」といった相談が寄せられ、こんなアドバイスをしているそうです。