新型コロナに「Play at home」で在宅支援。ソニーのゲーム事業が好調な訳
プレステ3発売で赤字転落した訳
そのため、本稿では、以下の2つの期間をそれぞれの切り口で検討してみたいと思います。
■ 2006年度の赤字転落:ゲーム事業(当時のSCE)の要因をメインに
■ 2007年度~2012年度の不調:SONY本体との関係も併せて
まず、1つ目のポイントである「2006年度の赤字転落」は当時の決算短信にもある通り、「PS3において導入期の製造コストを下回る戦略的な価格設定での販売による損失が発生したことに加え、その他PS3プラットフォームの立ち上げ関連費用を計上したことによるもの」であり、いずれも当時の新ハードであるPlayStation3の立ち上げに関係するものです。
なお、2000年度にもPlaySation2の立ち上げ期に同様の理由で営業損失を出したものの、PlayStation2は商業的に成功をおさめ、黒字化を達成しているため、2006年度の営業損失も当時は「想定の範囲内」であったと考えられます。
5年にわたる不振の原因は?
2007年度~2012年度の不調の原因については、詳細に書こうとすると本が一冊書けるサイズになってしまうため、本稿では決算短信で読み取れる範囲にとどめます。
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■ 2007年度:PS3・PSPの増収により、売上増・営業損失縮小
■ 2008年度:米ドル・ユーロに対する円高。PS2減収により売上減。PS3のコスト改善等により営業損失は縮小
■ 2009年度:ビジネスセグメント区分の変更を実施(ゲーム事業は「NPS分野」に編入。グラフ中の値にはPC「VAIO」関連・ウォークマンの売上が含まれている)。PS2・PSPの減収がPS3の増収分にをカバーし、損益悪化
■ 2010年度:PS3のハードコスト大幅改善。ソフトウェア売上数量増で黒字転換
■ 2011年度:ビジネスセグメント区分の変更を実施(ゲーム事業は「NPS分野」→「CPS分野」に編入。液晶テレビ・PC・デジタルカメラの売上も含まれている。グラフ中の値は2012年度の決算短信の値を利用してゲーム単体の値に遡及修正済)。PS3・PS2双方の売上が減少し、減益
■ 2012年度:ビジネスセグメント区分の変更を実施(ゲーム分野単独の値が取得可能に)。携帯ハード(PSP・PS Vita)含むハード・ソフトの売上が軒並み減少し、減収・減益
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このように整理すると、2009~2010年度の売上増は「他事業の売上が合算されているから」であり、見かけ上のものであったことがわかります。そして、結果的に2006年度に投入したPlayStation3や、携帯ハードのPSP・PS Vitaがうまく伸びず、親会社SONYの事業再編の影響も相まって苦しい時期が続いたと考えられます。
なお、2013年度には後継機種のPlayStation4が投入されており、それ以降のゲーム事業は順調に推移しているように見受けられます。