新型コロナに「Play at home」で在宅支援。ソニーのゲーム事業が好調な訳
新型コロナウイルス関連肺炎の流行拡大に伴い、緊急事態宣言の対象地域が5月6日まで「全国」に拡大されました 。この状況下では「自宅でどう過ごすか」が強く問われることとなります。
そのひとつの方法として、「ゲームで遊ぶ」という方法です。印象的な例としては、3月に先んじて全土を封鎖したイタリアにおいて、外で遊んでいる市民に向かって南部の都市バーリの市長が「プレイステーションで遊べ!」と叫んだ動画が日本でも話題を集めました。
「プレイステーションで遊べ!」
「ブラック企業アラート(@blackc_alert)」が、身近な企業を題材にして、企業の状況の調べ方・見極め方を解説する本連載。今回は趣向を変えてそのプレイステーションの販売元である「ソニー・インタラクティブ・エンターテイメント(SIE)」を取り上げていきます。
SIEは、欧州・米国エリアにおいてネットワーク通信量が増大したことを受けて、欧州で3月24日から、米国で3月30日から帯域制限を実施しました。帯域制限とは、ゲームをダウンロードする際の速度を抑制することであり、インターネット全体の通信帯域を確保するのが狙いです。
さらに4月15日には「Play at home」と銘打って、特定タイトルの無料開放や、インディーズゲーム開発者のための基金設立を告知しています。この攻めの施策の源泉について、公開情報から追いかけていきたいと思います。
実績:一度落ち込んだが近年は拡大傾向
まず、SIEとしての売上・営業利益がわかるデータを探して、グラフ化をしました。SIEはSONYの連結子会社であるため、SIE(およびその前身のSCE)の経営指標は単独で公開されていません。そのため、SONYのIRデータからわかる範囲での分析となります。
PlayStationシリーズは冒頭で触れたとおり、日本に限らず欧州・米国でも展開されており、本来であれば地域別の数値を利用すべきなのですが、SONYの決算短信は地域別データが非開示となっています。したがって、上記のグラフは国内・国外全体のゲーム関連事業の動向 としてとらえてください。
また、2009年度~2014年度はSONYの事業セグメント分割が頻繁に行われており、年度によってはゲーム事業以外の値が含まれているケースがあります(詳細後述)が、グラフについては可能な限りSIE以外の値が含まれていないデータを利用して作成しました。
これを踏まえて本グラフを確認すると、2005年度までは売上も伸び、安定的な黒字事業だったものが、2006年度ごろから赤字に転じ、2011・2012年度に底を打ち、以降は売上回復・黒字化に成功したというように読み取れます。