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「外出自粛」でも通勤電車に乗るのはなぜ?新型コロナで知るべき法律

学び

休業手当がもらえるかは微妙

 今回の緊急事態宣言では「経済活動を止めないため」、電車やバスなどの公共交通機関だけでなく、電気、水道、ガスといった社会インフラ、コンビニやスーパーなどの小売店業は通常通り営業を継続している。

 一方、東京都の小池百合子知事は10日の記者会見で、休業要請する業種や施設を発表。「遊興施設など」「大学や学習塾など」「運動や遊技のための施設」「劇場など」「集会や展示を行う施設」「商業施設」の6つの業種・施設に翌11日からの休業を求めた。

 また、居酒屋など飲食店については「宅配やテイクアウトのサービスは除いて、午前5時~午後8時までの間の営業とする」と、時短営業を求めるのみにとどまった。

 使用者の都合で労働者が働けなくなる場合、労働基準法26条に定められている「休業手当」に基づき、「平均賃金」(直近3か月の賃金総額を3か月の「総日数」で割ったもの)の60%以上の手当が支払われる。今回のケースだとその対象にはならないのだろうか。

「休業要請は、強制力はないとは言え事実上従わざるを得ない強いものです。そのような状況下で、あくまでも強制ではなく自主的に休業を決めるのであるから当然に休業手当の支払を求められるというのは、使用者にとっては非常に酷な状況です。一方で従業員の生活もかかっているわけですから、感染症の拡大を食い止めるという公共性の高い目的のための休業であることを考えつつ、この辺りの見解は今後示されてくることになると思います」

百貨店が休業したらテナントの従業員は…

銀座シックス

銀座のGINZA SIX photo by ITA-ATU

 たとえばデパートや百貨店が休業を決めた場合、入居するテナントも休まざるを得ない。その場合も「使用者(経営者)の判断による休みになるかどうか」で判断が分かれるという。

「休業の原因が『使用者が責めに帰すべき事由』であるかどうかがポイントです。もし使用者側の理由で労働者を休ませた場合は、その期間中の休業手当を支給しなければなりません。しかし、外的要因によるもので、使用者が努力しても休業を回避できない場合は、こういった義務はありません。

 上記のようなケースであれば、通常経営者として最大の注意を尽くしても避けることはできないものですし、個別の事情(従業員の配置換えの可否や施設の閉鎖状況等)を勘案しつつ、使用者の責めに帰すべき理由であるか否か判断されるのではないでしょうか。一方で労働者の生活を保証するという労働基準法の趣旨から、使用者が最低限の休業手当を支払うことができるよう、国のより手厚いバックアップも期待されるところです。現在、休業手当を補填する雇用調整助成金の特例措置などが進められています」

 今回の新型コロナはあくまで強制ではなく、国や自治体の要請のため、どちらに該当するか判断が難しい。ただ、加藤勝信厚生労働大臣は4月7日、記者会見で、企業が従業員を休業させた場合、「事業者は、直ちに一律に休業手当を支払わなくても良いということにはならない」と述べている。

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