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大ヒット「パン好きの牛乳」開発秘話。意外に食べ合わせ抜群なパンは…

ビジネス

加熱しすぎないように殺菌に工夫

天川隼人

株式会社カネカ乳製品事業開発販促企画チームの天川隼人さん

 こうした背景やコンセプトをもとに、およそ1年にわたる商品開発期間を経て完成した「パン好きの牛乳」。そのさわやかな後味を可能にしたのが、ベルギーにあるPUR NATUR(ピュアナチュール)社との技術提携だ。

「製造の段階で、生乳に加熱殺菌をしているのですが、この温度が強すぎるといわゆる牛乳の臭みが出てしまい、さわやかな後味にならない。加熱しすぎないように時間をかけて丁寧に行う必要がありました。

 また、PUR NATUR社の技術は素晴らしいものでしたが、気候風土や工場の製造条件が異なる日本に向けたローカライズに苦労しました。PUR NATUR社は、企業としての理念も生産者の側に立っていて、そこにも共感する面がありました」

「商談すらスムーズに設定できない」

 牛乳の産地と製造方法を打ち出すのではなく、何かと一緒に食べる(フードペアリング)という発想は、若い女性を中心に支持を集めた。まずは個人経営のベーカリー約300店舗で販売がスタートすることになった。

 しかし、天川さん自身が「最初のうちは、新規参入企業ということもあり、なかなか商品の取扱店舗の拡大が進まず、商談すらスムーズに設定できないこともありました」と語る状態が続いたという。

「発売当初は、大規模な宣伝プロモーションもできなかったため、まずはみなさんに実際にパンと一緒に飲んでいただくことにしました。2018年5月に東京・青山パン祭りに出店したところ、若い女性の方がインスタに投稿してくれて、SNSを中心に反響があったんです。

 今は累計約3000件投稿があります。秋には横浜・赤レンガ倉庫パンのフェス、世田谷パン祭りにも出店。テレビでも取り上げてもらい、会社にも『どこで買えますか?』という問合せがくるようになりました」

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