大ヒット「パン好きの牛乳」開発秘話。意外に食べ合わせ抜群なパンは…
ここ数年都内を中心に高級食パン専門店も増えている。行列や売り切れが続出する人気店も増えており、高級食パンはひとつのジャンルとして定着した。
そんななか消費者のニーズも多様化している。パンだけではなく、それに合う飲み物もコーヒー、紅茶、牛乳など様々な選択肢があるが、2018年の発売以来、じわじわと口コミで評判になっているのが「パン好きの牛乳」だ。
発売元は大手乳業メーカーではなく、「カガクでネガイをカナエル会社」でおなじみの株式会社カネカ。「化学メーカーがなぜ牛乳を?」と思うが、実は1949年の創業当初より、同社はマーガリン・ショートニング、イーストなどベーカリーや菓子の業務用食品素材を扱っている。
今回、「パン好きの牛乳」、そして2019年4月に第2弾として発売された「パン好きのカフェオレ」が生まれた経緯について、株式会社カネカ乳製品事業開発販促企画チーム、天川隼人さんに聞いた。
ベーカリー業界に恩返し
そもそもパン好きな人のための牛乳、カフェオレというコンセプトはどこから生まれてきたのだろうか。
「これまでの牛乳は、コクがあって味が濃かったりするものが人気でしたが、一方でパンと一緒に食べると、牛乳が濃厚すぎてパンの風味を消してしまう。新商品開発のために行った消費者調査で、こうした声がありました。パン好きの人に訴求できれば、他社の牛乳と競合するのではなく、『コクがあるのに後味すっきりな牛乳』をという新しいコンセプトが生まれるのではないかと思ったんです」
カネカが乳製品事業に本格参入したのは2018年春。これまでもパン・菓子業界と取引はあったが、参入の背景にあったのは「酪農業界に対する想い」だった。
「若者が牛乳を飲まなくなり、消費量が低下しています。また、後継者不足や厳しい労働環境から廃業する酪農家さんも増えている。そのなかで彼らと何か一緒にできないかという話が出てきたんです。当社が、酪農家さんの熱意やこだわりがこもった牛乳を作ることで、安売りされず適正価格で、消費者に飲んでもらいたかった」