忘年会で「怪談トーク」の無茶振り。真面目な営業マンのとった行動は?
ほかの社員も次々と怪談話を披露して大盛り上がり
当初の予想に反して、忘年会の二次会に参加したのは部長をはじめ、およそ20名。幼い子供のいる女性社員などを除き、ほぼ全員が残ったとか。
「せっかくなのでノートPCを備え付けのモニターに繋げ、実際に自分で撮ってきた心霊スポットの映像や写真を見せながら話をしました。仕事の営業トークとは勝手が違うので、しゃべりだけでは不安だったのもありますし、やっぱり動画や画像を見せながらのほうがイメージしやすいですからね。稲川淳二さんの怪談ライブとは違い、淡々と話をする感じになってしまいましたが、それでもみなさん聞き入ってくれたのでホッとしました」
酔いがすっかり覚めてしまいそうな気もしますが、今堀さんが話し終わった後も「実は、私もとっておきのヤバい話を知っているんですが……」と数名の社員有志たちも飛び入りで次々と怖い話を披露。
怪談トークライブ終了後も二次会参加者の中には、免許取り立ての頃に友達や恋人と深夜に心霊スポットを訪れた経験のある人も複数いたそうで、事前の不安を吹き飛ばすほどの大盛り上がり。今堀さんも知らないスポットの情報を提供してくれる方もいたそうです。
大口の追加契約ゲットで査定も大幅アップ!
「部長さんも自分の部下に怪談話ができる人がいたことをすごく喜んでいました。聞いたら、遊園地のお化け屋敷やホラー映画とかが大好きなそうなんですけど、奥さんも娘さんも大の怖がりらしく付き合ってくれないようなんです。
私がたまに行くスナックのママが霊感の強い人で、怖い話をいっぱい知っていると話したら『三次会はその店に行こう!』と言い出しちゃって。店の場所が遠かったため、その日は諦めましたが、後日、せがまれてその店に連れて行ったんです。そこは別に怖い話をウリにしているわけじゃないですが、ママの怪談ネタも気に入ったみたいで、今では1人でお店に通っているようです」
契約の権限を持つ取引先の部長をここまで満足させれば営業マンとしては大成功。以前から定期的に発注があった取引先とはいえ、翌年には大口の広告の仕事も追加で受けることになり、今堀さんの査定も大幅にアップしたそうです。
「会社にも貢献できたし、部長さんや部下のみなさんだけでなく自分も楽しめたのでよかったかなって。ただ、会社の後輩からは『後任の担当者のためにもハードルを上げないでくださいよ』って文句を言われてしまいましたが(笑)」
確かに、前任者がここまでやってしまうと次が大変かもしれません。ここまで取引先のためにやる必要があるのかという意見もあるでしょうけど、それは相手に喜んでもらおうとの気持ちがあるからこそ。その上で自分自身も楽しんだことが、良い結果を生んだのかもしれませんね。
― 特集・忘年会にまつわるエトセトラ ―
<TEXT/トシタカマサ イラスト/パウロタスク(@paultaskart)>