踏み倒された報酬100万円。元SEを借金苦に追い込んだヤバい社長
消費者金融から90万円の借金をする
出向先のNPO法人は、様々な会社のSE(システムエンジニア)の寄り合い所帯。しかし、どんなに成果を出してもマージンは会社がもらっていくシステムだったため、いくら成果を上げても給料は変わりません。悶々としていた渡辺さんに声をかけたのが、出向先で出会った40代後半のIT企業の社長Aさんでした。
「Aさんから最初は副業として直接仕事を依頼されました。そのまましばらくはWeb会社とのWワークをしていました。すると、Aさんから業務委託でやらないかという依頼があったんです。そこでWeb会社を辞めて、ビジネスパートナーとして業務契約を結ぶことにしました」
Web会社を辞めて、26歳のときに独立した渡辺さん。SEの社長と月額35万円の支払いを記した契約書を交わしたそうです。
「社長は見た目より実年齢が5~6歳若く、ブランドのスーツを着こなして、都内のタワマンに住むなど派手に遊んでいました。僕たちプロジェクトチームのメンバーをキャバクラに連れて行ってくれましたが、女子大生やOL兼業の20代のキャバ嬢たちからモテていましたね」
ところが、契約の最初の月から約束していた報酬が振り込まれなかったそうです。
「もちろん催促しました。すると、社長は『わかった』と言いながら、そのままスルーするんです。僕も信頼していた相手だったので、そのまま3か月は無償で働きました。しかし我慢できなくなって契約書を見せると、『これは仮契約で法的に無効』と主張してきたんです」
憤慨した渡辺さんは弁護士を雇って、交渉しようと考えますが「時間とお金と労力がかかるだけ」だと思い、断念。結局、合計100万円近い未払金は泣き寝入りするしかなかったそうです。
再びネットビジネスの業界に戻る
「生きるため消費者金融3社から利息7%で、それぞれ30万円を借金しました。それを返済するため、ありとあらゆる営業を行いました。主にホームページの制作を大量に獲得すると必死で働いて3か月で完済しました。社長に対する憎しみだけで突き動かされて、死に物狂いで働きましたが、精神的にボロボロでした」
そんな渡辺さんを救ったのはやはり「人との繋がり」でした。障害者支援で臨時職員として10か月働いた彼は、入居者たちから感謝の言葉をもらうことによって、ようやく一時の癒しを得たそうです。
「ネガティブな気持もやがて和らいでいき、精神がデトックスされました。ずっとこのまま福祉の仕事をしようかと迷いましたが、その頃、大手通信会社の子会社のコンテンツ制作の依頼をきっかけに、再びネットビジネスの業界に戻ることができました。信頼していた社長に裏切られて借金を作り、そして返済するまで、心に大きな痛みを覚えましたが、今ではそのことをバネにしています」
ビジネスを再開すると、1年で収入が倍増。それから数年後、現在はブラック企業で苦しんだ自分の経験を活かしたいと、ブラック企業の相談を受けたり、転職先を斡旋しているそうです。「将来は、もっと大きなスパンで、人と人とをつなげていきたいですね」と語ります。
20代は苦難の連続でしたが、やっと光が見えてきたようです。
<取材・文/夏目かをる>