新宿駅の人身事故をスマホ撮影。SNS社会で何が失われたか?<ダースレイダー>
“パブリックマインド”を持っているかどうか
ダースレイダー:で、今回の倫理問題に関してだけど。死体の写真というものをどうとらえるか。僕個人の考えで言うと、’90年代に死体写真集が流行ったりしたんだ。良い気持ちはしないんだけど、僕の死生観で言うと、死後の肉体に何かが宿っているとは考えていないから、それそのものに忌避感はあまりない。
戦場写真を戦場カメラマンやジャーナリストが撮影すると、そこには非常におぞましいものが写っているけど、それは倫理的に良くないというより、生々しい現実を伝えるため、必要に応じて、やったほうがいいと思う。
人身事故の報道の仕方をどうするべきかといったとき、メディアは経験、知識、波及効果などを考慮して、場合によっては本当に悲惨なことをそのまま報じたり、やっぱ見せなかったりすることがある。
死体写真、死体動画っていうのはそれぞれの哲学もあれば、アンダーグラウンドなところで流行っていたりもしていたけど、SNSだったり、公共の場では、みんなが何を考えているのか想像しているかどうかが大事。今回の場合、パブリックマインドがないから自分が面白いと思ったものをネットにアップしちゃうんじゃないかな。そもそも、そういう人がSNSで何かをやろうとすること自体がアウトだと思う。Twitterは高々“つぶやく”程度のものなので、もっと楽に考えたほうがいい。
「どんな覚悟で撮っていたの?」と聞く
ダースレイダー:人それぞれの倫理観あるってことを分かっていれば、「これはすごい嫌な気持ちになる人がいるな」とか「宗教上の理由でダメな人がいるな」ってことが分かると思う。そういったことを前提として持っていない人が簡単にブルーシートの中にスマホ突っ込んむというのは、間違いなくトラブルになる。
悲しい事故だからではなくて、特に公共機関で起きたことだし、単純にいろんな人がいる。そういう意味でも、今回の事件にはいろいろな要素が絡み合っているんです。テクノロジーが進化して、誰でも色々できるようになっちゃったとき、それをコントロールするのは知識と経験とスタミナだと思う。法律で規制するというより、本当なら教育で「インターネットとはどういうものなのか」を早い段階でやるべき。
今は子供もスマホ持ってますから、本来は早急に共有しなきゃいけないことだけど、案外教える側の大人がこのレベルなんで、先はかなり遠い。ブルーシートにスマホを突っ込んでいた一人ひとりに、「どういう覚悟で撮っていたの?」と真意を聞いちゃうのもアリだと思う。