大型バスの自動運転が実験スタート。乗ってみた感想と将来性
プレス試乗会に参加。運転士は窮屈そう?
出発式に先立ち、プレス試乗会が開催された。運転士は専門教育を受けた12人が自動運転バスに乗務できる。今回はレベル2で、安全確保を最優先にした自動運転を行ない、支障を及ぼす恐れがある場合は、手動運転に切り替える。
「自動運転を開始します」
音声が流れ、よこはま動物園正門を出発。交差点が近づくと、信号の有無に関係なく、「信号の安全を確認してください」の音声が流れ、運転士は安全確認に努める。
自動運転中はハンドルも自動で動くので、運転士は非常時に備え、握る寸前のような姿勢。ひじかけが追設されたとはいえ、見る限り、窮屈そう。専門教育を受けたとはいえ、普段の手動運転よりストレスを感じなければいいのだが。
自動運転バスは公道の最高速度30km/hのところ、20 km/hで運転する。群馬大学次世代モビリティ社会実装研究センター副センター長の小木津武樹(たけき)准教授によると、自動運転時のセンサーの状態を調査(データー化)する必要があり、20 km/hを“安全な速度”として設定したという。今後、実証実験が進んでいけば、道路側にセンサーを埋め込むなど、色々な方法をとって、速度を上げていくのは可能だと見ているそうだ。
交通量は少なく、のんびり我が道をゆく感じで進み、里山ガーデン正面入口に到着。ここで約10分撮影に充てたあと、よこはま動物園正門に戻る。プレス試乗会終了後、運転士のぶら下がり取材があり、自動運転に対する難しさについて聞いてみた。
「他社のバスとか乗用車がいるときの動向がちょっと読めないことがあるので、常に左右のミラーで安全を確認して、あとは手動に切り替えるときが多々あるかと思います」
その後、小木津准教授のぶら下がり取材でも、先述について聞いてみた。
「最初走れる場所は、かなり限定されると思っていますので、これを広げていく技術開発をしなくてはならないと思います。ひとつは雨や雪に対する堅牢性。大雨、大雪の予報が出ているときは、手動のドライバーさんを増やすとかで、カバーするなどの対応をしていきたいです。ゆくゆくはそうは言っていられませんので、様々な技術の革新をもって、“もっと(自動運転の)運用できる条件を広くしていければ”と考えております」
課題は人々に「お認めいただくこと」
「お住まいの地域の中に、自動運転のバスが走っていることをお認めいただくこと。自分が運転するクルマの前、後ろ、隣に自動運転のバスが走っていることをお認め(認識)いただくこと。“そういう環境を皆様といっしょに作ってゆく”ことが、我々事業者が課された使命だと考えております」
出発式のあいさつで、相鉄バスの菅谷雅夫社長が熱弁をふるい、自動運転に対する理解を求めた。
菅谷社長は10年以上前から「バス事業者の運転士不足」を予想していたという。路線バスを運転するには、大型二種免許が必要で、保有者の数も年々減少しているのだ。バス事業者によっては、運転士募集の際、大型二種免許の取得を自社負担しており、運転士の確保に懸命だ。
さらに自動運転の実用化には、「バスが自立して安全に走る技術、道路交通法をはじめとする諸法規を改正していただくこと。自動運転のバスが安全に走れるように道路を改修していただくこと。自動運転のバスにお客様が安心して乗っていただけること」を挙げた。
法の整備などでドライバーレスによる自動運転が実現すると、バスの増発、それに伴う車両の増備が考えられる。また、非常時に備え、非常用のボタンも必要になるだろう。重要な事案をいくつか挙げると、無賃乗車、バスジャックなど、防犯対策の強化。火災発生時や車椅子の乗客が利用する際の善処などだ。自動運転化によってサービスや安全性が低下しないことを切に願う。