怖いのはファシストよりもポピュリスト。イタリア社会を風刺した映画監督が語る
ファシズムの元凶はマスメディア?
――劇中、ムッソリーニがテレビを使って国民的人気者にのし上がっていく様子は、ベルルスコーニ元首相やトランプ大統領を想起させました。
ミニエーロ監督:「イタリアのメディア王」と呼ばれるベルルスコーニも劇場型政治家で現代ポピュリストの典型です。彼は1990年代前半に政治の世界に入り、3度も政権を握りましたが、その都度、現状に不満な国民の心をくすぐるような政策を主張する、変わり身の早いポピュリストでした。
彼はメディアを牛耳っていることから、テレビやインターネットを使い自分に有利な政治活動をしたと避難されています。本当に怖いのはこういった、理念に首尾一貫のないポピュリストではないでしょうか。
――映画のあるシーンで、『ソドムの市』(1975)の監督/脚本を務めたことで有名なピエル・パオロ・パゾリーニの壁画が登場するのはなぜですか?
ミニエーロ監督:パゾリーニはイタリアの文化人のなかではじめてマスメディアが権力であることを語った人物です。彼は未来を予見するような存在で若くして亡くなりましたが、彼が書き残したことは次々と現実になりました。映画でパゾリーニの壁画を映しだしたわけは、ファシズムが台頭する理由は独裁者ではなく、実は、マスメディアが元凶ではないか――という問いかけをしたかったからです。
スキャンダルにまみれ、主義主張がころころ変わるようなベルルスコーニを何度も首相にしたイタリア、そして、移民や難民の排斥を訴えるネオ・ファシストが未だ政界にいるイタリア……。まだこの国からムッソリーニは消え去っていないのかもしれません。ムッソリーニは私達イタリアのモラルを反映した存在なんです。
<取材・文/此花わか>