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職場のパワハラの定義とは? 上司・部下ができる予防策

学び

パワハラ行為の8割は上司によるもの

 厚生労働省による平成28年度委託事業「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」によれば、パワハラを受けたと感じた者がパワハラ行為を行った者として挙げたのは、8割弱が上司であり、圧倒的に多いケースとなっています。

 パワハラが難しい点はその判断基準です。業務上の命令や指導において、業務の適正な範囲で行われた場合には、たと受け手が不快と感じる場合でも、パワハラには該当しません。一方、業務上正しいことを命令、指導する場合であっても、感情的、攻撃的で社会通念上許容される限度を超える場合には、パワハラに該当する可能性があります。

 また、パワハラを受けている本人が、パワハラだと感じていなくても、周囲の者がその行為を見て、不快に感じ、職場環境を害することがあるので留意が必要です。

パワハラを起こさないため何ができるか?

ビジネスマン

 それではパワーハラスメントを起こさないためには、どのような対策が考えられるでしょうか。

 まずはパワハラの予防です。それにはまず、経営トップがパワハラを許さないという方針を明確にすることが大切です。また、「就業規則等に規定を設ける」「労使協定を締結する」「社内ガイドラインなどを作成する」といったパワハラに対する会社の方針を策定、整備します。

 また、アンケートを行い、社内の実態を把握したり、管理職をはじめとして社員に研修を行ったりすることも有効です。パワハラ問題は企業のリスクになりますし、働く人がパワハラのために精神的、肉体的に追い詰められるような事態はあってはなりません。

 また、パワハラを解決するために、社内に相談窓口を設け、責任者を決めます。事実関係の迅速で正確な確認、プライバシーへの配慮、被害者に対する配慮措置、行為者に対する適正な措置、今後に向けた対応を実施します。行為者に対する再発防止研修なども必要に応じて行います。

パワハラに悩んでいる部下ができること

 それでは、自分がパワハラを受けて悩んでいる場合はどのようにしたら良いのでしょうか。

 パワハラは我慢していても解決しないことが多く、何もせずにいると逆にエスカレートするケースもあります。一人で悩まず、上司や同僚、あるいは社内外の窓口に相談しましょう。具体的には、

・パワハラと思われる行為の記録をとる(その行為を、いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように行ったのか、記録をとる<手帳のメモ、あるいは録音など>)
・上司や同僚に相談する
・会社の相談窓口を利用する
・外部の相談窓口を利用する(労働局の総合労働相談コーナーなど)

 職場で発生するパワーハラスメントの実態は多種多様で、その対策にひとつの決まった正解はありません。パワハラに対する意識を高め、それぞれの職場の事情に即した形で取り組みを行い、対応を考えていくことが今後ますます重要になるでしょう。

<TEXT/澤上貴子>

さわかみ社会保険労務士事務所代表。特定社会保険労務士/健康経営エキスパートアドバイザー。会社の発展を支え、従業員のモチベーションを育む労務コンサルティングを目指す。20年以上の豊富な実務経験にもとづく、的確で時には攻めの姿勢のアドバイスと、きめ細やかな対応が評価を得ている。労働諸法令に関する指導・相談・手続・講師業、その他多岐に亘る分野において、良心と強い責任感をもって展開している

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