職場のパワハラの定義とは? 上司・部下ができる予防策
職場におけるハラスメントの代表的なものに、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントと並んでパワーハラスメントがあります。
これまでの記事では「女性社員に握手を求めるのはセクハラ?」、「職場のマタハラを防ぐには?」ついて記してきました。
昨今は前者2つに比べて話題に上ることが多く、様々な場面で争いとなったり、重要な課題として取り上げられているパワーハラスメントについて取り上げてみたいと思います。
パワハラの法的な定義とは?
パワーハラスメントは、法令上は明確に定義されていません。平成24年に発表された「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」では、パワハラについて次のように定義付けています。
「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」
こうした行為は、上司から部下に行われるものだけではなく、先輩・後輩間や同僚間の行為も含みます。また、「職場内の優位性」とは、職務上の地位だけではなく、専門知識や人間関係、経験などの様々な優位性が含まれます。
セクハラやマタハラと異なり、パワハラについてこれまで明確に禁止する法律はありませんでした。しかし、労働施策総合推進法の改正により、2020年には大企業においては職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となる予定であり(中小企業は猶予あり)、国はパワハラ対策の法制化に向けて大きく動き出しました。
職場のハラスメントにあたる6類型
厚生労働省は、職場のパワーハラスメントについて、裁判例や個別労働関係紛争処理事案に基づき、次の6類型を典型例として整理しています(パワハラに当たりうる行為のすべてについて、網羅するものではありません)。
① 暴行・傷害(身体的な攻撃)
例:殴打、足蹴りをする。椅子を蹴る、書類を叩きつける。
② 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
例:人格を否定するような発言をする。大勢の前で長時間叱咤する。
③ 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
例:会議に出席させない、食事会等に誘わない、別室に隔離して仕事をさせる。
④ 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
例:高すぎる目標、多大な業務量、本来の業務でない仕事を強いる。
⑤ 業務上の合理性なく、能力、経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
例:本来の業務でないのに故意に簡単な仕事や関係のない作業をさせる。
⑥ 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
例:家庭環境などをしつこく尋ねる。上司などが部下に引っ越しの手伝いなど個人的な依頼を強要する。