トランプ大統領がファーウェイを“ここまで警戒した”理由
深刻化する「米中貿易戦争」を背景に、ファーウェイ問題が注目されている。
6月29日にはトランプ大統領が習近平国家主席と大阪で会談し、半年ぶりの米中首脳会談が行われる。いったい何が問題なのか、私たちの生活にどのような影響があるのか。そもそも、ファーウェイってどんな会社なのか――。中国ジャーナリストで、編著に『中国S級B級論』がある高口康太氏に話を聞いた。
ファーウェイ、スマホの世界シェアで第2位
「ファーウェイは中国語では『華為技術有限公司』という社名の通信機器企業で、5月にはスマホの世界シェアでアップルを抜き、サムスンに次いで世界2位となりました。日本市場でもファーウェイ製スマホは2~3年前から出回っていますし、Wi-Fiのモバイルルーターなどは、一見気づかなくても、よく見るとファーウェイのロゴが入っていることがよくあります。
ファーウェイの2018年決算の純利益は、約1兆円。これは日本企業でいうならホンダやソニーと同規模で、中国を代表する巨大企業のひとつと言えますね。特に注目すべきは研究開発費。2018年は約1兆6000億円を注ぎ込んでいるんですが、世界第5位に相当します。マイクロソフトやアップル以上の技術開発に資金を注いでいるわけです」
そんなファーウェイのいったい何が問題になってるのだろうか。
「ファーウェイは米国政府から制裁を受け、アメリカ企業と関連のある製品やサービスを一切使えなくなってしまったんです。アメリカ由来の製品は多岐にわたるので、世界のなかで村八分にされたようなものですね。
グーグルマップやグーグルプレイが使えなくなるばかりか、第三者のアプリでも動かなくなるものもでる可能性があります。スマホの心臓部にあたるSoC(システム・オン・チップ)は自社開発していますが、コアのIP(知的財産)を提供しているソフトバンク傘下のARM社との新規契約が難しいため今後は開発が難航するでしょう」
アメリカが中国を長年甘やかしたことのツケ
創業以来の絶体絶命の危機と言えるこの事態。なぜそんな制裁を受けることになったのだろうか。
「背景には米中の貿易摩擦があるんですが、この問題は根深くて、アメリカが中国を長年甘やかしたことのツケが回ってきたんです。米中国交正常化以来、アメリカは中国に対して“関与政策”を採ってきました。中国社会は一党独裁で政治的に問題があるけれど、経済的な関与を続ければ、やがて社会は良い方向に変わっていくだろうという考えだったんです。
そうして中国は世界第2位の経済大国にまで上り詰めるのですが、米国の対中貿易赤字が膨れ上がり、オバマ政権の後期にはすでに問題視されていました。その後も、中国は南シナ海へ軍事基地を建設したり、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を設立して中国主導で世界経済を動かそうとするなど、米国と露骨に覇権争いをするようになりました」