芸能人に会える仕事のはずが…“ミーハー女子”が陥った就活の罠
強引な契約を結ばせた結果、最悪の事態に
恋人との間に、すきま風が吹いただけでなく、新たな試練が待っていたのです。
「達成不可能なノルマだったため、どうしてもどの社員も営業方法が強引になってしまいます。訪問販売の場合、主婦やお年寄りが多いので、考えるすきを与えないよう『今すぐに契約しないと後悔する』『今だけ特典の10%オフ』『1年後にキャッシュバックされます』などとテキトーなことを言って、契約とりました」
もちろん、そうした行為を今では後悔しているという山下さん。ですが、強引に契約を結ばせた結果、毎日のようにクレームの電話が鳴りっぱなし。クレーム処理によって、契約が無効になるだけでなく、ペナルティが課されてしまいます。
「ペナルティで契約数がマイナスになるのです。どんどん負債が増えて、ノルマが200件近く溜まってしまいました。しかも、あるお客が消費者センターに訴えたことから、会社だけでなく、インターネット回線の本社にまでクレーム電話がかかってきたのです。
うちの会社の社長が、インターネット回線の本社に謝罪に行くなど大騒動になりました。周囲から『顧客から仕事を降ろされて、経営が悪化したり、最悪、倒産に追い込まれたら、お前のせいだ』と責められるようになったんです」
ペナルティで半年間無給で働かされる
山下さんは一時うつ病になって、通院。一方、会社はペナルティと称して半年間、無給で山下さんを働かせたそうです。
「家賃を払えなくなった時に、親に電話をしました。心配した親は『いつでも実家に帰ってこい』と慰めてくれましたが、このままでは引き下がれないと思いました」
そこで山下さんは、区のホームページで見つけた「無料弁護士相談」に申し込みます。そこで相談したところ「法的な措置をとれるかもしれないけど、時間と労力を有効活用したほうがいい」と転職を勧めてくれます。
「私が『結果を出せずに1年ぐらいで退職しても、次が見つかるかどうか不安』だと正直に言ったら、弁護士の先生が転職アドバイザーを紹介してくれました。それで、やっと退社を決意できました」
再就職活動をスタートさせた山下さん、半年後には中堅のIT企業の営業に決まります。訪問販売という激務の経験が買われたそうですが、逆境を見事に乗り越え、やっとまともな仕事に就けましたね。
<取材・文/夏目かをる イラスト/小池祐子(@ikeko322)>