28歳OL社長が考える“豊かさ”「良い大学、良い会社が成功ではない」
豊かさの定義がゆらいだ小布施町での滞在
――そもそも小布施町の最初の印象はいかがでした?
正能:「線路がまっすぐ!」と思いました(笑)。歩いて行ける距離にコンビニがないことも驚きで、最初の数日間は戸惑いの中、過ごしていましたね。
でも日を重ねるごとに、地域の方が挨拶してくれるようになったり、お祭りに呼ばれたりするようになったりして。地元の方々が、小布施に住んでいることをすごく楽しそうに誇らしげに話してくれるんですよ。「こういう暮らしをしていてね」って。
私は東京生まれ東京育ちなのですが、東京で生まれ育ったことを、一度も誇りに思ったことがなかったので、それがうらやましくもあり、衝撃でした。
――どうして衝撃だった?
正能:私は小学校からいわゆる進学校に通っていたので、「良い大学に入って、良い会社に入るのが人生の成功だ」と、どこかで思ってきたんですよね。
でも、そうじゃない小布施の人たちの毎日がすごく輝いて見えました。私も自分の毎日の暮らしに、楽しさとか誇りを持ちたくなった。自分の中での「豊かさの定義」が揺らいだ経験でしたね。そんな小布施町の精神的な豊かさを、「素敵だな、かっこいいな」と心底思って、そこから小布施に通うようになりました。
<取材・文・撮影/栗林篤>
【正能茉優】
1991年東京生まれ。慶應義塾大学総合政策学部在学中の2012年に「小布施若者会議」を創設し、その後、ハピキラFACTORYを創業。現在は大手電機メーカーで働きながら、同社社長。慶應義塾大学大学院特任助教。内閣官房「まち・ひと・しごと創生会議」有識者委員