いじめ、引きこもりを経て映画監督に「映画を観て、心が浄化された」
今年3月、『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京)に偶然出演し、話題となった映画監督のアベラヒデノブさん(30)。
4月末~5月上旬にかけて行われたアップリンク渋谷のイベント「ラブラブラブシネマ 2019 EXPLOSIONNNNN!」では、長編最新作『明日も晴れてもらわな困るわな』が上映され好評を博したばかりだ。
現在、俳優や音楽活動など幅広く活躍するアベラさんだが、そもそもなぜ映画の世界に足を踏み入れたのだろうか? これまでの足跡と今後の展望について、直接本人にインタビューを敢行した。
上田監督のアイデアに「どんな脳ミソしてんねん!」
――『家、ついて行ってイイですか?』に出演したときの反響が大きかったそうですね。具体的にはどんな声があったんでしょうか?
アベラヒデノブ(以下、アベラ):単純に「面白かった」って声もありましたけど、一番印象的なのは僕と同じようにイジメを経験した方から熱いメッセージをもらったことですかね。作品の題材でイジメってダサいって思ってたトコもあったんですけど、人間の試練としては扱うべきやなって改めて気づかされました。
――ちなみにTwitterのフォロワー数は増えましたか?
アベラ:番組が放送されている時間にリアルタイムで一気に2000人くらい増えました。今ってWebの時代って言われてるけど、やっぱりテレビジョンすごいなって実感しましたね。
――同番組では、あるコンペで『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督に勝ったエピソードも語っています。当時から上田監督をライバル視していましたか?
アベラ:そのときのコンペで上田監督から「チンコが家出する話を考えてる」って聞いたときは、「どんな脳ミソしてんねん!」と思いましたね(笑)。僕にはない面白いアイデアを考える人で、タダモノじゃないと思ってはいましたけど、まさかあれほどの“カメ止め!現象”になるとは予想してなかった。
当時から上田監督はいつも笑顔で物腰のやわらかい方でしたけど、きっとそういう“幸せオーラ”が映画の強度みたいなものにつながっているんじゃないかと思います。
僕は「やっぱみんな最低なんやな」に救われる
――アップリンク渋谷でアベラさんの映画『明日も晴れてもらわな困るわな』を拝見しました。コミカルなシーンがありながらも、男女4人の愛憎が入り乱れる話で身につまされる思いがしました。
アベラ:あの映画は、僕の人生の要素がつまっているというか。共同生活の部分は、藤井道人監督と今の事務所(BABEL LABEL)の社長・山田久人さんと一緒に住んでいたのが大きいし、引きこもりになる部分は高校の途中から学校に行かなくなった体験が反映されています。
自分の彼女が友だちとヤッてるのに気付いて、家を飛び出すエピソードはまんま実話で(笑)。あとギターが中途半端なままなのに「紅白に出る!」みたいなスタンスも僕自身ですね。
――映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』にも通じる切なさを感じたのですが影響はありますか?
アベラ:僕、あの映画メチャクチャ好きなんですよ! ちょうど大学の卒業制作を撮る前に、僕には珍しく2回映画館に観に行って。あの映画って体裁とか見栄とかをぜんぶひっぺはがして、人間の裏側の汚い表情とかも見せますよね。やっぱり倫理よりも動物というか、そういうところを出されたときに人って共感する。
これは過去の元カノ全員敵に回すことになりますけど、僕自身一番好きな女性とは付き合えなかった気がするんです(笑)。そういう過去のうだつの上がらなさって本当に嫌な気持ちになるけど、「やっぱみんな最低なんやな」って思ったときに、ちょっとだけ救いになったりする……影響は大きいですね。