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「#ES公開中」仕掛け人の怒り。今の就活は投資ではなく“投棄”

学び

アドバイスしたがる大人に注意したほうがいいワケ

市川と内藤
市川と内藤:じゃあ、極論アドバイスはもらいに行かないほうが良いんですかね?

寺口
寺口:いや。会うのは大事だと思いますよ。ただ、1次情報取得の目的を何に置くかだと思っていて、何の準備もなしに、ただアドバイス(解釈)を聞きに行くのは意味がないというか、危険だなと思ってます。

 スポンジのように、他人のバイアスが自分の中に入ってきてしまって、自身の観点での判断ができなくなってしまうから。

 実際に先輩や社会人に話を聞きに行くなどして、企業の1次情報を取りに行く前に、まずは半実名などの信頼性が担保されたクチコミ、ちゃんとしたメディアや書籍、IRのようなデータ中心の情報などの2次情報の中から確からしいファクトを中心に集めて、自分の観点を育てて欲しいということです。自分をバイアスから守るために。

 そのうえで、自分の観点と仮説をブラッシュアップさせるためにアドバイス(解釈)なるものを多面的に受けて検証するという感覚が必要だと思います。

市川と内藤
市川と内藤:そしたら、まずは自分でファクトを集めておくなど、自分で考えるための準備が必要ということですね。

寺口
寺口:そうですね。一番の悲劇は、自分でファクトを集めるプロセスをすっ飛ばして思考を放棄して、解釈満点の1次情報を学生に押し付けることに危機感すら感じないレベルの人に会う、ましてやお金を払うこと。

 これはめちゃくちゃ極論ですが、敢えて誤解を恐れず言うと、最近、連日のように就活生への性犯罪で社会人が逮捕されていますよね。「アドバイスしてあげるよ」ってしつこく擦り寄ってくる大人は、第一線で活躍してないだろうし、暇って考えはあっていいと思います。

 疑心暗鬼というよりは、少しクリティカルに考えてほしい。

大人に話を聞きにいく前に自分で考える準備を

就活の大学生

市川と内藤
市川と内藤:おお、極論ですね! でも、やけにアドバイスしたがる人っていますよね(笑)。

寺口
寺口:自然なことだと思います。例えば、仕事でずっと抑圧されて一回も褒めてもらったことない人でも、学生は「大変勉強になりました」と自分の言っていることをメモしてくれている。

 そんな人にとって、アドバイスできた経験って、考えてみたら絶対気持ち良いですよね。その快楽に負けて、学生に寄生して自己肯定感を高める「アドバイスおばけ」にならないように気をつけないとな、と思います。

 バイアスを認知できない状態においては、アドバイスをしている側もされている側も、進化していないんですよ。その時間って一体誰にとって価値があるのかなと思います。

 逆にいうと、めっちゃ準備して仮説も持っていけば、第一線で活躍している社会人の首を自分に向かせることはできる可能性はある。そういう人はだいたい、ファクトを中心にフィードバックをしているし、アドバイスをすること自体に抵抗感を持つ傾向があります。認知バイアスに気づいている場合が多いから。

市川と内藤
市川と内藤:大人に話を聞きにいく前に自分で考えるための準備をする。これはアドバイスする、してもらう時間を意味のあるものにするためにも必要なことなのですね。

マーケットを透明化するムーブメントを起こす

市川と内藤
市川と内藤:Twitterなどで、次のアクションを起こさないと何も起こらないと、アクションの連鎖についてよく言われていますが、今回「#ES公開」中のキャンペーンを経て、次どういったステップ踏まれるのかなと思って……。

寺口
寺口:シンプルですよ。今回の「#ES公開中」はいくつかあるアクションのうちの最初のひとつで、今後、僕ら自身もマーケットの透明化を促進するために、さまざまな角度からアクションをしていきます。

 でも、僕らが情報の開示を続けてもいつかは途切れてしまうんですよね。だから、それと同時にやっていかなくてはいけないのが、透明性のある採用をしている企業や人を、持続的にヒーローにしていくということです。

 ヒーローにするというより、当たり前のことを当たり前にやっているフェアな企業や人がもっと適切に評価されても良いよねというだけなのですが。「#ES公開中」のような情報開示や、Newspicks、VORKERSと共同で行ったデータ比較による企業選びの観点のアップデートによって、誠実に人のキャリアに投資する企業や向き合う人事に、光が当たる仕組みをつくっていきます。

 こうしたことをニュース性を持ってやり続けて、主語の異なるアクションの連鎖でムーブメントを継続していくことが必要不可欠だなと思っています。いつまでたっても主語が「僕ら」だったら、状況は何も変わらないんですよ。多くの方がこの動きを応援してくださっているのは、本当に嬉しいし心底感謝しています。欲を言うと、実際に1ミリでも具体的なアクションをしてくれる企業や個人が増えるほうがもっと嬉しい。嬉しいというかそのほうがマーケットのためになるなと思っています。

 今でも毎日 「#ES公開中」は毎日Twitterで検索していますし、日々生まれる開示アクションはしっかりと届け続けています。もちろん、僕ら自身もエピソード2を仕込んでいます。今後もマーケットの透明化に賛同する方々と一緒にアクションを連鎖させて、仕事選びの透明化のムーブメントをすすめていきます。

市川と内藤
市川と内藤:ありがとうございます。「#ES公開中」の動きに関しては、僕ら自身採用に関わっていながら、採用市場の課題感についてここまで思考を巡らせることは無かったなと、自分たちの視座の低さを痛感しました。

 今後とも寺口さんのSNSやnoteのからも多く学ばせていただきます! よろしくお願いいたします。

<取材/市川と内藤 文/橋口和奈>

学生時代は青山学院大学で4年間を共に過ごした2人。2018年株式会社ビーボに入社後、各々新規事業開発や採用に携わるが、あるきっかけで現在は企業内YouTuberとして就活や働くのリアルを「市川と内藤の就活チャンネル」にて発信

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