世界をメチャクチャにした、アメリカ政治「影の人物」の本性
どこを見まわしても新元号「令和」の話題で持ちきりですが、平成も残り1か月を切ったいまだからこそ、改めて平成の歴史についても振り返りたいところ。
いいことも悪いことも、さまざまな出来事が思い起こされますが、ビジネスマンとして動向に注目しておきたい国のひとつといえば、やはりアメリカです。
そこで今回は、アメリカの政治を裏で支配し、近代の歴史を大きく塗り替えてしまった“影の人物”について、衝撃の実話を映画化した作品『バイス』をご紹介します。
アメリカ人でも本性を知らなかった謎の存在
主人公となるのは、ディック・チェイニー。おそらく、この名前を聞いて誰だかわかるという日本人は一般的に少ないと思いますが、史上最年少となる34歳で大統領首席補佐官になったのをはじめ、1989年には国務長官に選出、そして2001年にジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領となった人物です。
肩書きだけ見ると、さぞ優秀な政治家なんだろうと感じさせるところですが、実はアメリカのみならず、世界をメチャクチャにしたとまで言われているのがチェイニー。タイトルの『バイス』には、副大統領を意味する「バイス・プレジデント」のほかに、悪徳や邪悪という意味が込められているのだとか。
とはいえ、本作を手がけたアダム・マッケイ監督いわく、「多くのアメリカ人もチェイニーについてはほとんど何も知らなかった」というほど、チェイニーは謎に包まれている存在。そんななか、彼の半生と“影の大統領”として暗躍していた舞台裏が、包み隠さず描かれているのが本作です。
前科者から権力者へと成り上がり
なぜ、ここまで悪名高き存在と言われているかというと、チェイニーこそが“無能”と言われていたブッシュ大統領を巧みに操り、イラク戦争を起こさせた張本人。彼がいなければ、オバマ大統領も、現在のトランプ大統領も生まれなかったと言われているほど、その後のアメリカに大きな影響を与え続けています。
それだけに、「アメリカや世界を変えてしまったチェイニーとはいったい何者なのか?」というのは、あらゆる観点から見ても知っておきたいところです。
まず興味をそそられるのは、どん底からの成り上がり人生。大学時代は授業にも出ずに酔っぱらってばかりで退学となり、その後は電気工として働くも酒癖の悪さは変わらず、飲酒運転で逮捕されてしまうほどの落ちこぼれっぷり。
そこから国家の運命を左右するほどの権力者へと駆け上がっていく様は、ある意味アメリカンドリームと言えるかもしれませんが、そこで欠かせないのが妻のリン。彼女がいなければ、酔っ払いの電気工として生涯を過ごしていたのではないかと感じてしまうほどの存在感を見せています。
情報操作をして国民を欺いたり、法をねじ曲げたりと、決して許される行動ではないものの、頭の回転の早さや処世術、そして最良の伴侶を見抜く力など、学ぶべきところがあるのも事実。アメリカを良い方向へと導くためにチェイニーの才能を発揮させていたら、アメリカには違う過去・現在・未来があったのではと思わず考えてしまうはずです。