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斎藤工、「出会うべくして出会った」世界的な映画監督との仕事

暮らし

世界的な映画監督である所以(ゆえん)を見た

――日本語のセリフでは斎藤さんに託された部分も多かったと思いますが、演じるうえで意識したことはありましたか?

斎藤:作品によっては、一言一句脚本通りに演じるべきときもありますが、シーンごとにエリックが確認していたのは感情の部分。だからこそ、この作品は言葉を伝える映画ではなくて、人の心を伝える映画なんだなと感じました。

 今回、エリックは最初からカメラを回していましたが、だからこそドキュメンタリーのような瞬間がたくさんあり、自分自身でいることが多い現場だったと思います。食べ物に対するリアクションはほぼリアルでしたし、人間の反射的な皮膚反応みたいなものも捉えてくれたので、映画の撮影をしていたという感覚はなかったです。

 テストを繰り返して生まれるものもありますが、人間の動物的な心の動きや繊細な部分を大事にするところも含めて、エリックが世界的な映画監督である所以を垣間見ることができました。「演技をしない演技」をエリックと彼の素晴らしいスタッフによって引き出してもらったと感じています。

「今でも工のラストシーンは忘れられない」

エリック・クー監督

エリック・クー監督

――そういう意味でも、これまでの作品では見たことがないような斎藤さんの表情も映し出されていましたが、監督はどのような思いでカメラを向けていましたか?

クー監督:確かに、これまで工が出演しているほかの作品と今回はまったく違うものになっているんじゃないかな。日本語のシーンでは、僕が思っている通りかどうかは、彼の演技を通して確認することができたけど、それはさっき、工も言っていたように、この映画は会話がメインではないという証。

 だからこそ、心の交流を通して、作品の主題をみなさんに伝えたいという気持ちがあるんだ。僕がいまでも忘れられないのは、工のラストシーン。カメラを回しながら自然と涙が流れてきたんだけど、僕が自分の作品を撮っているときに泣いたのはこれが初めての経験だったよ。

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