アカデミー賞を2度受賞した名優が、仕事選びで大事にしていること
今の人は「有名になること」にとらわれすぎている
――ご自身は俳優を続けるうえで、大切にされていることはありますか?
クリストフ:「私も俳優になりたいんです」と相談されることもあるんだけど、僕はあまり勧めないようにしているよ。なぜなら、そう言ってくる人の多くは「有名になりたい」と思っているから。つまり、「名声を得ること」と「俳優になること」というのは別モノなんだ。
とはいえ、「俳優になる」というのは簡単なこと。それよりも大変なのは、「俳優でいる」ということなんだよ。俳優になって何をしたいのかというのも大事だけれど、自分が夢見ているような機会が一生与えられないまま終わるかもしれず、ずっと苦労を強いられる可能性があることを受け入れられないんだったらやめたほうがいいと伝えるようにしているんだ。
でも、そういう風に言うと、理想主義的な若い人は「それでもできます!」と答えるんだけど、それを聞くと「まだまだわかってないんだな」と思ってしまうんだよね(笑)。自分の家族を養いながら、底辺で苦労して、困難を抱えながら一生懸命に生活や仕事をするというのは本当に大変なことなんだよ。
<取材・文/志村昌美 撮影/難波雄史>