“元女性”の26歳男芸人・前田かずのしん「LGBTって言葉は好きじゃない」
ストレートとLGBT当事者で違うネタへの反応
――所属事務所の先輩から「こんな芸風にしたら?」というアドバイスを受けたことは?
前田:浅井企画の先輩からはないですね。多少ボケでややこしいこと言われたりはしましたけど。
――あくまでもイチ後輩として見てくれている感じですか?
前田:そうですね。逆に一般の方から指摘を受けることはあります。ペッパーボーイズのネタで、女々しい石本に対して僕が「おなべが言うのもなんだけど」って返す漫才があって、その動画がネットに上がってるんですよ。
で、それを見たLGBTの当事者から「性別に特化したネタをやらなくていいんじゃない?」とか「ちょっと嫌なイメージを持ちました」とかっていうコメントがついたりすることがあって。
――やはりLGBTの方は敏感に反応してしまうんでしょうね。
前田:ストレートな方には、鋭利な視点でトランスジェンダーをネタにするとウケるんですよ。「こんな風に考えてるんだ」とか「やっぱり男臭さ、取り違えてるんだ」みたいなものが。でもLGBT当事者の方は「そこまで考えてない」とか拒否反応が起こったりする。僕はどっちにも受け入れて欲しいけど、そのバランスが難しいですよね。
LGBTを超越して、もっと魅力的な男になりたい
――具体的にはどんなネタならLGBTの方に受け入れられると思いますか?
前田:性的な部分を出しつつも、LGBT当事者の方が有益な情報になるネタでしょうね。僕みたいな芸人が活躍してて嬉しいとか、こういう生き方があるんだっていうのを提示できるようなもの……。
まぁ最終的にダメならお笑いとは別のところで出そうかな、とも考えているんですけどね。ネタとかトークでは石本を取り上げてもらって、結果的に「前田も面白いじゃん」ってなってもいいかなと。
――最後に前田さんの今後のヴィジョンがあれば教えてください。
前田:今まで狭い道を走って来たけど、男にもなったし、一気に視界が広がった感じなんですよ。だから、もっと自由にやって行こうと思ってます。
芸人としてもそうですけど、トランスジェンダー界隈でもいろんな活動できるんじゃないかとか。本を出したり、講演会やったり、発信する側として頑張ってみたいです。あと単純に魅力的な男になって、男とか女とかLGBTとか関係なく全ジャンルの人からモテたいですね(笑)。
【インタビュー前編はこちら】⇒さんまも驚き。“元女性”の男芸人26歳に聞く半生は「恵まれすぎてるな」
<取材・文/鈴木旭 撮影/スギゾー。>
【前田かずのしん】
1993年1月6日、熊本県生まれ。2016年1月に石本しょーきとお笑いコンビ、ペッパーボーイズを結成。戸籍を男に変更した「元女性」前田と、「ド天然ポンコツ男」石本のお笑い界唯一無二のコンビの一人として活躍中