働き方改革でも残業年2000時間!? 勤務医の一部に、過酷すぎる「上限案」
医師の働き方改革で健康被害はあるのか?
同じ働き方改革の中で、終業時間から始業時間までに11時間はあけて、最低限の休息時間を確保するための、インターバル制度も提案されています。
しかし、医師不足の地域や診療科に勤める医師たちに関しては、インターバル時間は7.5時間しかありません。仕事の前後に1時間ずつの食事・通勤・身支度やシャワー時間を設けると、睡眠可能な時間は毎日5.5時間となり、世界一短い日本人の平均睡眠時間6.5時間をさらに更新することになってしまいます。
私は産業医として通算1万人以上の働く人と面談をしてきました。その経験から申しあげると、時間外労働が40時間でも健康障害を起こす人もいますし、120時間でも元気な人もいました。
働き方改革よりも建設的な議論を
時間外労働が多ければ「疲労」がたまります。それが健康障害につながるか否かは、誤解を恐れずに言えば、個々人の体力や気力、許容度、やりがい、やらされ感、自己成長の実感や上司同僚からの承認など、残業時間以外に複数の要素があることを感じています。
さらに、同じ働き方改革の中で、有給休暇を最低でも5日間は取らせることが法律で定められました。
時間外労働の上限をどこまで伸ばせるかだけよりも、それと同時に、時間以外の要素のことを議論したり、有給休暇をどれだけ増やすか、強制的にするか、いっそのこと「3か月連続勤務し、1か月間連続休暇」などの勤務形態を検討したほうがよいのではないか。
そうした議論を重ねたほうが、まだ少しは有給休暇に希望を乗せて、僻地医療に勤しむ多忙な医師たちも「夢」を見られる。そう考えずにはいられませんでした。
<TEXT/武神健之>
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