忖度が引き起こした悲劇…“自称フィクサー”に見る世間をあざむく交渉術
どの国の政界でもビジネス界でも暗躍している存在といえば、「フィクサー」。良いか悪いかは一概にはいえないものの、陰の仲介人として目には見えない力で世界を動かしているのは事実といえます。
とはいえ、「フィクサーとは一体何者か?」と疑問を抱いている人もいると思うので、今回ご紹介する映画は“自称フィクサー”が巻き起こす悲喜こもごもを描いた最新作『嘘はフィクサーのはじまり』です。
首相と親しくなる方法とは?
世界金融の中心地であるニューヨークの一端を牛耳っているユダヤ人上流社会。自称フィクサーのノーマンは、何とかしてそこに入り込もうと、小さな嘘を積み重ねては少しずつ人脈を広げることに奮闘していました。
そんなある日、出会ったのはニューヨークを訪れていたイスラエルのカリスマ政治家エシェル。偶然を装って接近し、ノーマンは高級な靴をプレゼントするのでした。
それから3年が経ち、大出世して首相となったエシェルは、ノーマンと再会。首相から歓迎され、お墨付きをもらったノーマンは、一躍時の人となるのです。しかし、ノーマンの過度な忖度により、国を巻き込む緊急事態へと発展してしまうことに……
元祖二枚目俳優がまさかの役どころを熱演
今回、ノーマンを演じているのは、ハリウッドの名優リチャード・ギア。これまでのダンディで二枚目な印象を脱ぎ捨て、しがない初老男性を見事に演じており、思わず「これがリチャード・ギア?」と疑いたくなってしまうほどのハマり役を見せています。
それもそのはず、なんと撮影の1年前から役作りを始めており、歩き方や表情だけでなく、微妙に耳を立てることで滑稽さを出したりと、細部にわたるこだわりはもはや職人技。
その結果、嘘くさくお調子者だけど、どこか憎めないキャラクターを完成させ、観客を引き込んでいくのです。
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