不愛想な先輩の付き合い方「目線と上司と声掛けの順序」を意識した新人向けコミュ術【教えて先生】
新入社員として、上々のスタートを切れているだろか。社会人の98%が、社会人1年目に何らかの大きなミスを犯した経験があり、そのうち7割近くの人が、先輩・上司・同僚の助けで救われた経験があるらしい。
しかし、そんな温かな人間関係の職場ばかりでもないだろう。新人なりに一所懸命報告したり、相談したりしているのに、職場の先輩に塩対応されて悲しい思いをしている人も現在進行形で居るのではないか。
そこで今回は、数々の著書を持ち、文部科学大臣優秀教職員表彰されるベテラン教師の松下隼司(まつしたじゅんじ)さんに、職場の先輩とのコミュニケーション方法について考えを語ってもらった。
学生時代の記憶も新しいフレッシュな社会人に向けて、困ったら先生に聞いてみようという原点に立ち返った企画だ。ぜひ、最後まで読んでもらいたい(以下、松下隼司さんの寄稿)。
不愛想な職場の先輩にどう対応すればいいのか
「今、無理!」
職場の怖い先輩に、仕事に関する話題で声を掛けた時に、断られた経験がある。20年以上前、小学校教師になる前のアルバイト先での話だ。
タイミングを自分なりに見計らったのに「今、無理!」と食い気味に即答された。
「こんなに冷たい対応は私だけにするのかな?」と思ってその先輩を観察した。他の人へも同じように対応していた。
「良かった、私だけが嫌われているわけでないんだ」と安心したと同時に、冷たい反応に傷付き、ムカっとした。
もちろん、職場なので基本、何かしらの仕事を皆が、ずっとしている。「今、無理」という事情が本当にあったのかもしれない。
しかし「今、無理!」と言われたり、ため息をつかれたり「さっき、言った!」と言われたりするたびに、言われる側は精神的に疲弊してしまう。
反応が怖くなって、話し掛ける行為そのものを控えるようになった経験すら私にはある。結果、大きなミスをしてしまった苦い思い出もある。
私は、今年で、22年目のベテラン教師だ。教師になる前、アルバイトも含めていろいろな仕事をしてきた。職場の先輩の冷たい対応に傷付き、イラついた経験は人並以上にある。
この記事を読まれている新入社員の中にも、同じような経験を今している方が居るはずだ。
話し掛けても、不愛想な返答しかない職場の先輩にどう対応すればいいか、私なりのコミュニケーション術を3つ紹介したい。
同じ高さまで目線を落とす
タイミングを見計らい職場の先輩に話し掛けたのに「今(忙しいから)無理!」と断られた経験がアルバイト先であると冒頭で語った。
今は、小学校に勤めている。20年以上前に居たアルバイト先よりもはっきり言って激務だ。毎日の45分間の休憩時間をとれた記憶がない。授業が終わった放課後も、会議や研修、校務分掌の業務(先生に割り当てられた分担業務)でバタバタしている。
そんな忙しい職場環境で、相手への意識と配慮をもって仕事する若手に出会った経験がある。
その若手に話し掛けられると、何か仕事をしている時であっても、気持ち良く自分の仕事の手を止めて話を聞ける。
その若手は、腰をかがめ、話し掛けたい相手と目線を合わせてから声を掛けるコミュニケーション術を心掛けていた。
中腰でない。ひざを床に着き「お仕事中に申し訳ございません」と言って話し掛ける。低姿勢で、謙虚な話し掛け方だ。ちょっと丁寧すぎると感じる人も居るかもしれない。
しかし、自分のためにひざまで着いて目線を合わせ話す相手には誰もが、仕事の手を止め、話を聞く気持ちになるはずだ。
逆に、デスクワークをしている先輩や上司に立ったまま話し掛けると目線が上からになる。言い換えると、相手を見下ろす格好になる。言葉で丁寧に話し掛けても、見た目と姿は丁寧ではない。
その若手教員の話し方を通じ、自分自身の振る舞いは上から目線だったなと感じた私は以後、自分の行動をあらためた。
近くに居る他の先輩に先に話し掛ける
「今、無理!」という塩対応の職場の先輩が、話を聞かざるを得ない状況をつくる方法もある。
例えば、不愛想で、いつも塩対応の先輩にいきなり話し掛けるのではなく、不愛想な先輩の近くに居る他の先輩に先に話し掛ける作戦をお勧めする。
不愛想な先輩の近くに居る別の先輩に、
「お仕事中に申し訳ございません……」
と言って話し掛ける。その上で、
「お忙しい中で聞いてくださって、ありがとうございました!」
とお礼を言う。それから、間髪入れずに不愛想な先輩に話し掛けるのだ。
すてきな別の先輩の対応を間近で見聞きさせているので、不愛想な先輩も相応の対応をせざるを得なくなる。自分本位に対応すると、周りからの評価が悪くなってしまうからだ。
時と場合によっては1人だけでなく2人ぐらい話し掛けて(対応の手本を見てもらってから)不愛想な先輩に話し掛けると対応が変わる場合もある。
上司に相談するための証拠を集める
「今、無理!」「さっき、言った!」など、先輩の塩対応が続き、業務上のコミュニケーションに支障が出る場合は、共通の上司への相談もお勧めしたい。
上司に相談する場合は当然、記録があった方がいい。何月何日、何時に、どんな内容で話し掛けたら、こんな対応で困りましたと、できるだけ具体的に記録を残しておきたい。
それでも上司が、きちんと対応してくれないならもう、新人の皆さんの問題ではなくなる。上司の問題だ。
以前、知り合いの弁護士が教えてくれた。業務上の内容で上司に相談し、その上司が対応しない場合「消極的なパワハラ」に上司が該当するらしい。
きちんとした対応を上司がしない場合は、その記録も残しつつ、あらためて相談すればいい。それでも対応してくれない場合、さらに上の上司に、記録と共に相談するのだ。
これまでの内容をまとめる。機会を見計らって話し掛けても、仕事の確認のために話し掛けても、不愛想な感じが続く場合は以下の行動を試してみてほしい。
・同じ高さまで目線を落とす
・近くに居る他の先輩に先に話し掛ける
・上司に相談するための証拠を集める
きっといい効果があるはずだ。ぜひ、試してみてほしい。
[寄稿者プロフィール]
松下隼司(まつしたじゅんじ)
大阪の公立小学校教諭
絵本〈せんせいって〉(みらいパブリッシング)、〈ぼく、わたしのトリセツ〉(アメージング出版)
教育書〈むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営〉(東洋館出版社)
Voicy〈しくじり先生の「今日の失敗」〉
[参考]
※ 最初はみんな社会人1年生!先輩208人が語る、1年目にミス・失敗しちゃったエピソード集 – 株式会社ネクストレベル