「この娘達を全部売る!」アラフィフ漫画家が目撃した、蒸発した父の背中<漫画>
10年前に家出した父と、フィリピンで再会することになった主人公のユウは、その出会いをきっかけに、怪しいビジネス、薬物、事件など、現実とは思えない出来事に遭遇していく漫画『ココ・ロングバケーション』(講談社)。
“90%実話”と銘打たれ、実録系漫画として注目を集める同作を手掛けた、近藤令さん(@kondourey)にインタビューを敢行。前半の記事では、この作品を描くまでのお話を中心に話を聞いた。
後半となるこの記事では、「この娘達を全部売る」と語る父親との再会や、漫画家として苦悩した日々を乗り越え、描くことになった本作への思いについて語っていただいた。また、この記事では第1話の一部を特別に紹介する。
【インタビュー前編を読む】⇒「父親が借金で蒸発」バブル全盛期の狂乱を描く漫画。作者が歩んだ“驚きの半生”<漫画>
10年以上音信不通だった父との再会
──商業誌での連載を獲得できず、1度は創作を休憩されて、お父様が暮らすフィリピンに行かれたと?
近藤令(以下、近藤):時系列で説明しますと、最初のアシスタントをクビになった後に、親戚のおばさんから「お父さんが会いたがってるよ」っていう連絡がありまして1度、再会してるんですよ。なので、漫画で賞をいただく以前ですね。
──10年以上、音信不通だったお父様とお会いすることに抵抗はなかったのですか?
近藤:というよりも、「今、どうしてるんだろう」という会いたい気持ちのほうが強かったですね。さすがに、以前の父親とはまったく違い、漫画で描いたようなアロハシャツを着こなすような風貌に変わっていたのには驚きましたけど。
フィリピンパブで働く女性を育成
──本作の通りであれば、お父様は現地で日本のフィリピンパブで働くための女性を育成する仕事をされていたそうですね。そのお仕事を知ったときは?
近藤:私も若くて、親父からは合法だと聞いていたので……。そういう世界もあるんだろうなという。今にして思えば、ダメなんだろうというのはわかるんですが。
──では、再会した後は良好な関係性で?
近藤:そうですね。最初に行ったときはそのまま2か月間滞在して、あとは何年か置きに会いに行ったり、親父が日本に来ることもありました。そういう良い関係だったので、創作から離れたときも、気晴らしのつもりでフィリピンへ行きました。