1カ月にわずか3回だけ走る黄色い新幹線の正体とは?実は“正式名称”も存在した
2022年は、日本の鉄道開業150年周年。新幹線も1964年10月に開業してから60年近くが過ぎた。出張に、帰省に、旅行に、欠かすことのできない交通手段だが、よくよく考えてみると、さまざまな謎が次から次へと浮かんでくる。
時速300キロで走る新幹線の窓は、小石が当たってもなぜ割れないのか? 北海道新幹線の先頭車両が長い理由は? そんな新幹線にまつわる謎の数々を解説した『最新版 新幹線に乗るのがおもしろくなる本』(著・レイルウェイ研究会)より、1カ月にわずか3回だけ走る新幹線の正体などを紹介する。
1カ月にわずか3回だけ走る新幹線の正体とは?
一般的な新幹線のイメージは、白やシルバーなどの淡いボディカラーで、青か緑の細いラインが車体の横を走っているといったところだろう。ところが、東海道・山陽新幹線を走る、車体が目も覚めるような濃い黄色に塗装された珍しい列車がある。それは「ドクターイエロー」の愛称をもつ車両だ。
この列車は、ドクターの名のとおり新幹線のお医者さんで、700系をベースに開発された検束用車両。いわば「定期健診」のために線路上を走っている。ドクターイエローが検査しているのは、軌道、電力、信号、通信設備で、新幹線の営業電車と同じ時速275キロメートル程度の速度で走行してみて異常がないか点検するのがその役割だ。
真っ黄色な新幹線、万が一見かけたら幸運
たとえば、かつては熟練の保線工がレールを叩いて歩きながら、音の変化で異常を見つけたような仕事を、車両に備えた機器で行なう。7両編成のドクターイエローでその役を担うのが4号車の軌道試験車で、特別なセンサーを備えた台車を装着して軌道の検測をする。センサーが異常を感知すれば、その区間を管轄する保線所に即時に連絡して、点検・補修が行なわれる仕組みだ。
ほかにも7号車はATCなど信号関係の点検を専門に行なう車両で、2号車は装着した特別のパンタグラフで、架線の異常をチェックするなど、各車両内にはコンピューターの端末画面がいくつも並んで、測定状況を瞬時に表示できるシステムが整っている。夜間走行だったため目立つ黄色に塗装されたが、今は昼間、のぞみダイヤで1カ月に3回、こだまダイヤで1カ月に1回程度走っているというから、万が一見かけたら幸運である。
ドクターイエローは、正式には「電気・軌道総合試験車」と呼ばれる。JR東日本は色こそ黄色ではないが、同じように「電気・軌道総合試験車」を東北・上越・北陸・北海道などの新幹線に走らせており、こちらはEast I(イーストアイ)の愛称がある。